政府は、生活保護当事者のうち就労可能な人々が約30万人いるとしている(参考:厚生労働省資料)。

 稼働年齢(20-64歳)、なおかつ傷病・障害はなく、しかも就労をしていない人々を数えあげれば、確かにそうなるだろう。「この30万人の人々に職業訓練を施せば、日本の労働力不足はなくなる」とする意見もある(参考:「就労可能生活保護受給者に職業訓練施し移民不要と三橋貴明氏」(NEWSポストセブン より)。しかし、この「30万人」の中に、「若くて健常という意味では働けるけれども、実際に働く場があって、働き続けられるわけではない」という人々が相当の比率で含まれているとすれば? 「生活保護受給者の就労」という用語は、まったく異なる色合いで見えてきそうだ。

「結局、『就労支援をする社会資源があればうまくいく』という問題ではないんです。『支援体制を整えれば万々歳、あとは職場があれば』ということはないんです。就労して、就労を継続するには、さまざまな能力や性格面での特性が求められます。でも生活保護の方々は、何らかの病気や、心や性格面の問題や、知的な問題を抱えていることが多いんです。政府は『働けるはずの人が、生活保護受給者の中には30万人いる』と言っていますけれども、どこにでも出ていける労働力が30万人いるわけではありません」

 もしかすると、就労支援や就労の試行錯誤を下手に繰り返すよりも、生涯にわたって就労しないことを認めて生活保護費を渡し続ける方が「安上がり」なのかもしれない。もちろん就労の意味は、単に「労働を提供して賃金を得る」にとどまらない。「生活保護利用者が勤労の権利を行使できるように手伝い、機会を提供する」という試みには、本人の人権という面でも意味がある。しかし、費用対効果という面では問題が大きすぎる可能性もあるかもしれない。

 ともあれ、2013年12月に成立した改正生活保護法と生活困窮者自立支援法には、数多くの就労促進メニューが、大きな期待とともに盛り込まれた。それらは現在、どのように機能しているのだろうか?

改正生活保護法の「アメとムチ」
「絵に描いた餅」になったアメ

 就労による生活保護からの脱却を促進するため、改正生活保護法では「就労自立給付金」が新設された。

 生活保護を利用しながら就労している場合、就労収入の一部が「収入認定」される。現在、月額1万5000円までは「収入認定」が行われず全額が手元に残る。しかし、就労収入が大きくなるほど収入認定額も大きくなり、どれほどの収入を得ても、手元に残せる金額は、約4万円までしか増えない。1950年の制度発足当初から、就労所得を隠さない限り、「生活保護に就労をプラスして、生活保護より豊かな暮らし」とはならないように制度設計がされているのだ。