社員参加型のビジョンづくり
しかし、大きな組織になれば、経営者が1人でビジョンを決めるということはまずありません。
経営企画部が中心になってビジョンを取りまとめる会社もあれば、社内でメンバーを集めてプロジェクトチームを立ち上げたり、アイデアを募って社内コンテストで選んだりと、さまざまな取り組みがなされています。
こうした社員参加型のビジョンづくりは、メンバーがビジョンを「自分ごと化」するいい機会になります。
ここで問題が起きる場合もあるでしょう。たとえば、社員たちの声を集めてみると、経営者の考える方向性とはまったく異なるアイデアばかりが出てくるといったことです。リーダーにとっては痛恨の極み。それまでの自分のメッセージがメンバーに届いていなかった証拠です。
またこれは、リーダー・メンバー間のコミュニケーションを見直すべきだというサインでもあります。これまでの伝え方では伝わっていなかったのですから、トップリーダーの代わりにビジョンを伝える「中間リーダー」への伝達も含めて、もう一度考え直す必要があります。
その意味では、リーダーに着任したばかりときは、メンバー参加型のビジョンづくりではなく、まず自らの考えに基づいたビジョンを提示するのがいいでしょう。メンバーたちとのコミュニケーションがある程度進んで、次の節目に差しかかるころに、改めて現場からアイデアを募るのです。
ある意味でこれは、リーダーの言葉がどれくらい現場に届いていたかのテストにもなります。リーダーにとって厳しい結果が出るかもしれませんが、軌道修正のための貴重なチャンスとして前向きにとらえるようにしましょう。
家族経営などの後継者としてリーダーになった場合については、次回お話します。
(第8回へつづく・2月15日公開予定)