140字以内で“つぶやく”ミニブログ「Twitter」(ツイッター)。多くの著名人・有名人がTwitter上でブログよりも頻繁に“生声”をつぶやき始めたことから、日本でのユーザー数がこの1年間で爆発的に増えた。
そんな2010年4月末、「第1回Twitter小説大賞」(ディスカヴァー・トゥエンティワン主催)が発表された。これはその名のとおり、Twitter上で募集した文学賞だ。
作品を発表する場を求める本気の作家から、手軽さに魅力を感じる一般投稿者まで、送られてきた作品は実に2357作品。コメディ、ホラー、SF、恋愛、推理などなど、テーマも多岐にわたる。
ここで、栄えある第1回大賞作品(作者:@bttftagさん)をご紹介しよう。
「町の小さな郵便局に今週も彼女は現れた。局員たちに水曜日さんと呼ばれる彼女が今日差し出した手紙にはしかし宛名がない。「これじゃ届きませんよ」苦笑しながら顔を上げた彼の目に映ったのは、うつむき加減できゅっと口元を引き結び、真っ直ぐに彼を見つめる真摯な瞳だった」
いかがだろう。小説や物語に好き嫌いがあるのは重々承知だが、簡潔な文章の中にも確かな情景が浮かんではこないだろうか。
当初の予測よりはるかに大量の、かつ良質な作品が送られてきたため、大賞作品1つと優秀作品5つに加えて、急遽“審査員特別賞”を増設したという。応募作品を書籍化した『140字の物語 Twitter小説集』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)も好評販売中だ。
このように、作品の発表の場としてTwitter小説を利用する人もいれば、宣伝媒体の1つとして捉え、活用する企業もある。
新商品の発売に伴い、テレビCMと連動したTwitter小説(長編)をウェブサイト上で連載している日本コカ・コーラ社(現在は終了)など、Twitterを使った新たなメディア構築が、今後しばらく注目を浴びそうだ。
長短問わず文学作品である以上、Twitter小説が一昔前の携帯小説のように、“新しい文章表現云々”といった論争の矢面に立たされているのも事実だ。もちろん、両者は一概に比較できるものではないし、ツールの進化に伴って表現方法が変わるのは当然のこと。
書き手にモチベーションを与え、不特定多数の読み手の目に触れる可能性を、コストをかけずに生み出したTwitterの功績を、ここは受け入れるべきではないだろうか。ただし、クオリティの低い作品を世の中に多数送り出してしまっては、本末転倒だ。先人が培ってきた「小説文学」という文化を穢すことにもなりかねない。
そこで、“敷居”の高さを調節するためにも、今回のTwitter小説大賞のような存在が価値を持つわけだ。プロの目、第三者の目でしっかりとした審査を行ない、評価する。「簡単にコピーできてしまう」といったウェブの特性を意識した著作権対応さえしっかりやれば、新たな文学形態として一時代を築く可能性もある。
(筒井健二)