アメリカ東海岸発・世界に広がった卒業式の祝辞の全訳掲載、第2回。アメリカの大学入試は日本ほど厳しくないと思われているが、有名大学に入るためにはあらゆる面で高い内申点をとらなければならず、実績以上に良い評価を得ようとする競争が激化している。マカルー先生の憂慮に耳を傾けよう。

きみが「特別じゃない」証拠はどこにある?

 ええ、好き放題させてもらって、だいじにされて、べたべたに愛されて、ヘルメットをかぶらされて、プチプチでぐるぐる巻きにされたでしょう。そう、いろいろとほかにやることがあるだろうに、いい大人が抱っこして、キスして、食べ物を食べさせて、口のまわりをふいてくれて、お尻もふいてくれて、しつけて、教えて、勉強も見て、コーチをして、話を聞いて、相談に乗って、励まして、慰めて、また、頑張ってと言ってくれましたよね。さあ、行ってとつつかれて、おだてられて、乗せられて、お願いもされましたよね。お祝いもしてもらって、機嫌もとられて、ああ、何てかわいいの、とも言ってもらいましたよね。

 そう、わかってるんです。で、たしかに、わたしたちもきみの試合や、芝居や、演奏会や、発表会を見に行ったんですよ。そりゃあもう、きみが会場に入ってきたら、笑顔がはじけて、きみのかわいいおしゃべりのたびに何百人もの人が感心して息を飲みましたよね。ほら、もしかしたらウェルズリーの町の新聞に写真が載ったことだってあるんじゃないですか。そして今日、ハイスクールも征服した……間違いなく、ここにいる人たちはみな、きみたち、この素敵な町の誇りと喜び、あの立派な新校舎から最初に巣立つ人たちのために集まってくれたんですよ。

 でも、自分がどこか特別なんじゃないかとは思わないでください。そうじゃないから。

 その証拠はいたるところにあります。数字ですね。英語の教師でも無視するわけにはいきません。ニュートン、ネイティック、ニー……ニーダムも言っていいのかな、大丈夫?……この三つのハイスクールだけでも、まあざっと、2000人は卒業生がいるでしょう。近所のNで始まる学校だけでもね。国全体では、いまごろ3万7000を超えるハイスクールから320万人以上の卒業生が巣立とうとしています。つまり、3万7000人の卒業生総代がいるんですよ……生徒会長も3万7000人います……美声のアルトも9万2000人くらいいるでしょうか……ふんぞり返った体育会系の人も34万人くらいいるでしょう……アグのブーツとなると、218万5967足くらいそろっているんじゃないですか。