その場で即決して投資していく中国や韓国の投資家。
どうしても遅れがちな日本企業

 ミャンマーに魅力を感じているのは、何も日本企業だけではない。現地では、より先行している中国企業や、韓国企業の看板や商品をよく見る。彼らは日本企業よりもアグレッシブに進出を進めている。「中国や韓国の投資家は、その場で即決して投資していく。日本はどうしても遅くなりがちだね」といった話を現地でよく聞く。何も早ければよいわけではないが、リスクも顧みずに積極果敢に進出している中国や韓国からの投資は、グローバルなミャンマーブームの狂乱を端的に物語っている。

 それでは、今まではどのような企業がミャンマーへ積極的に投資を行ってきたのだろうか。図表1-6は、1989年から2015年までの、累計での国別のミャンマーへの投資額(外国投資法のみ)だ。これを見ると、中国、タイ、シンガポールといった国が、今まで積極的に投資してきたことがわかる。

 一方で、最近はどの国からの投資金額が多いのだろうか。図表1-7の各年度別投資額上位ランキング(外国投資法対象のみ)を見てみると、2012年以降のトップは、3年連続でシンガポールが占めている。また、シンガポール以外のベトナムやマレーシアも年によっては上位に顔を出し健闘している。一方で、2011年には1位だった中国は、その後その座を譲り渡している。

 なお、この数値でシンガポールが1位になるのは、数値上のからくりがある。現在ミャンマー進出において、多くの国の企業がシンガポールにある拠点を通じてミャンマーに投資を行っている。ところが、こうした数値はすべてシンガポールからの投資とミャンマー上では計上される。従って、実際は日系企業によるミャンマー投資も、シンガポール拠点を通じて行うと、それはシンガポールからの投資と換算されてしまうのだ。

 図表1-7を見ると、米国はランキングに入ってきていないものの、前述の理由でシンガポール等、他国経由の投資は行われ始めていることがわかる。米国による経済制裁の影響か、出遅れ感は否めないが、遅れを取り戻すべく新たな市場に対してのアプローチを積極的にかけている。首都のネピドーでは、ミャンマー政府へのミーティングに来ている欧米系企業の一行をよく見る。また、全米商工会議所が、ASEAN加盟10ヵ国にある米系企業現地法人の経営者を対象に実施した調査では、事業拡大の優先順位の高い国として、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、ベトナムが挙げられており、中でもミャンマーでは、回答者の91%が事業拡大を計画している。