社長はハンコを押していればいい
その後、社内の若手を中心に集め、社内を説得してまわりながら新商品の開発を実現した宮本さんは、テプラを爆発的なヒット商品へと育て、キングジムの第2の柱を築き上げたのでした。
こうした経験を持つ宮本さんのリーダー論は明快です。
「優秀な若手社員もたくさんいますから、なるべく任せるように心がけています。社長ってみんな偉そうにしているけれど、よほどのスーパーマンでない限り、それぞれ専門でやっている人のほうが知識も豊富ですから、現場のほうが正しい判断を下す確率は高いと私は思っています。
社長の仕事でいちばん大事なのは組閣人事ですよ。みんなの信頼を得られる本当に優秀な人を大臣級にきっちりと配置していれば、その大臣級の判断がいちばん正しいはずなんです。社長はそうなるように人を配置しないといけない。
だから、『社長はハンコさえ押していればいい』ぐらいの会社が、本来あるべき姿なのかなと思います。すごく小さい会社だと、社長がみんなを引っ張っていかないといけないかもしれませんけど、上場企業ぐらいの規模になったら、あまり社長が率先して動いてはいけないのではないかと思います」
テプラのような成功体験があると、社長になってからも開発担当に口を出したくなるのが普通でしょう。
しかし宮本さんは、ご自身の体験を一段上から俯瞰し、「成功できたのは当時の社長が自分に任せてくれたからだ」ということを忘れていません。自分の成功を「開発は現場に任せるべき」という教訓へと昇華させ、「役員1人が賛成すれば商品化していい」というルールを生み出したのです。
(第28回へつづく・3月30日公開予定)