高収益による内部留保の増加。
その恩恵とは?

 ここで大切なことは、そのようにして慎重な経営に努め、高収益の企業体質をつくり上げ、豊かな財務体質を誇る企業にしたことが、度重なる経済変動を克服し、京セラを今日まで導く原動力になったということです。高収益であるということは、不況になって売上が減少しても、赤字に転落しないで踏みとどまれる「抵抗力」があることを意味します。

 また、高収益企業では内部留保が増加していきますので、不況が長引き、利益が出ない状態が続いても耐え抜くことができる「持久力」がついていきます。さらには、余裕資金を使って、不況でふだんより安くなっている設備を購入するなど、不況期でも思い切った投資を可能とする「飛躍力」がついていきます。

 常日頃から、慎重な経営姿勢のもと、高収益になるよう全力を尽くして経営にあたることが、不況への最大の予防策となったばかりか、不況期の最良の処方箋ともなったのです。その意味から、私は「一〇%を超える利益率が出せないようでは、経営をやっているとは言えない」と、ことあるごとに社内外で訴えてきました。

 不況ともなれば、製造業では注文が減り、つくるものがなくなり、売上も減っていきます。売上が一〇%落ちれば、当然利益も減少していきます。このとき、かねて一〇%以上の利益率が確保されているとすれば、売上が一割程度ダウンしても、まだ利益を出していくことができるでしょうし、売上が二割ダウンしたとしても、若干の利益は確保できることでしょう。

 おそらく、売上が六~七割程度にまで落ち込まなければ、赤字には転落しないものと思います。売上が多少減ったとしても利益が減少するだけで済むからです。二〇%あるいは三〇%といった利益率を上げている企業であれば、売上が半減したとしても、まだ利益を残すことができるはずです。

 つまり、かねて高収益の経営ができているということは、不況で売上が大幅にダウンしても、なんとか利益を出していけるという、底堅い企業であることを意味するのです。