理不尽なことを楽しむ術とは?

川村 川上さんはこれから先、どんなことに興味を持っていくんでしょうか?
川上 本当に何にも興味がないんですよね。困っています(苦笑)。2014年にKADOKAWAと経営統合をしたのも、国内のコンテンツ産業とネット業界が相当厳しくなってきて、僕としても危機感があったときに一緒に何かやろうと誘っていただいたので、「それじゃあ」ということであって、具体的に何をやるかはここからです。

川村 海外勢にITとエンタテインメントのジャンルで、それこそ「不戦勝で勝つ」みたいなことにも興味がないですか?
川上 全くないですね。アメリカ人とは若いときからずっとビジネスをやっていますけど、なんとなく何を考えているのかもうわかるし、仮に興味を持てることが見つかったとしても、それを生産性に結びつけるのが難しいというか。例えば最近は「多様性」に興味があって、そのことについて考えるのはすごく楽しいんですが、仕事には絶対に関係がない(笑)。

川村 川上さんは哲学者みたいなところがあるので、「多様性」とかもそうですが、興味を持って、発見して、考えて、理解したことを本にしていってほしいですね。
川上 今週またつまらない発見をしたんですけど、偉い人って「現象化」しませんか? 例えば偉い人が怒ると、怒られた方は「雷に遭った」とか「地雷を踏んだ」とか、自然現象のように解釈する。これは精神安定を絶対とするサラリーマンの生きる知恵だと思うんですけど。

川村 天災だと思ってやりすごせと(笑)。
川上 それがうまくできる人とできない人の差を考えたとき、やはり家庭を持っているかどうかに帰着するなと。

川村 家庭がない人には「現象」として捉えられないんですかね?
川上  要するに子どもとか、子育てに疲れた嫁の相手とかは理不尽なことだらけで、ロジックで説明できない(苦笑)。だから、ありのままに受け入れて、現象として扱うしかない。そういう経験を積んだ人は上司の怒りを自然現象として捉えられるし、偉い人の腰巾着とか取り巻きになれるんだと思います。独身者は難しいですよ。

川村 理屈ではどうにもならない部分が、楽しみどころなのかもしれないですね。
川上 理不尽さこそ、人生の象徴だと思いますね。