情報を「極限」まで絞り込む
われわれの通ったUCLA‐NUSのEMBAでは、毎回、すべての授業で何らかのプレゼンテーションが求められた。事前に予習できる場合もあれば、その場で即席で求められることもある。
聞き手も真剣だ。日々、実戦で百戦錬磨の相手だけあって、発表の内容が要点を得なければ容赦なくその場でさえぎられたり鋭い質問が飛んでくる。
また、プレゼンの重要度が高い課題として「プラクティカム」(実務、演習)と呼ばれる約1年かけて行う、チームでのコンサルティング・プロジェクトがあった。単位数も多く、卒業を左右する大きなプロジェクトである。
このプロジェクトでは、50万円のコンサルティングフィーを勝ち取ってくるというのがミッションになる。
ちなみに、私(山崎)のグループでは、日本の大手SNS会社に対して「インドで展開するビジネスプラン」に関する戦略を練り、その会社の幹部に対してプレゼンを行った。グループ内にインド出身のメンバーがいたので、そのコネクションを使ってフォーカスグループ(顧客に近い対象のグループ)をつくり、グループディスカッションの様子を撮影・編集し、その他市場調査を行って資料をつくり、プレゼン本番に臨んだ。そして最終的には50万円のコンサルフィーを獲得することに成功した。海外進出のビジネススキームとしてプレゼンが高く評価されたのだ。
もちろん、そこに至る過程では教授からさまざまなアドバイスやダメ出しがあった。発表前日に指導教授に本番さながらにプレゼンしたところ、約10ページのプレゼンを一刀両断、5ページに削られた。多くの資料を漁り、思考を重ねた内容をその10ページに凝縮したつもりだったが、客観的に見ればそこには不必要な情報が入っていた。苦労した分、情報を捨てきれないでいたのだ。
だが当然ながら、そんな苦労など聞き手にとってはどうでもいい。人を動かすには情報を可能な限り絞り込み、結論を効果的に示さなければならない。
また、他のクラスメイトは、日本では宅急便で有名な大手運輸会社からプロジェクトを取りつけた。彼らはシンガポールで高級店舗が並ぶオーチャード地区内での物流効率化プロジェクトを提案し、見事実際のビジネスとして採用された。企業にとっては50万円でも投資なので、投資に対するリターンとして実際の彼らの課題解決に役立たなければ意味がない。