「本当に自分を知る」には、どうすればいいか?

 リーダーシップを学ぶ第一歩は、何といっても「自分自身のリーダーシップ・スタイルを知る」ことだ。

 そもそも自分が「どのようなリーダーなのか」「どのような傾向が強いのか」を知らなければ、自らのリーダーシップを補完することも、強化することもできない。

 だからこそEMBAでも、リーダーシップにおける最初の授業は「あなたはどんなリーダーなのか?」という問いから始まる。

 私たちが通ったUCLA‐NUSのEMBAのリーダーシップクラスでは、第1回の授業が始まる際、準備として自己評価および周囲の人たち(同僚・後輩・上司など約10人)に以下のようなアンケート(「360度サーベイ」と呼ばれている)を行ってくることが義務づけられていた。

○他人から尊重されるように行動しているか?
○自分の興味・関心を越えてチームの利益のために働いているか?
○共通の使命感を持つことの重要性を主張しているか?
○自分が大切にしている価値観や信念を話しているか?
○ゴールは達成できるという確信を表明しているか?
○将来のビジョンを明確に表現しているか?
○他人をグループの一人ではなく、個人として扱っているか?
○個人ごとに異なるニーズ、能力、情熱を尊重しているか?
○教えることやコーチングに多くの時間を費やしているか?
○課題解決のための新しい方法を提案しているか?

 ここでは例として10個ほど挙げたが、もっと多くの質問事項について、自己評価と他者からの評価を5段階評価で行い、それを材料にして第1回目の授業が行われる。

 授業では、この結果について科学的に分析した内容が提示され、「自分の認識と周囲の感じ方の違い」、あるいは「一致しているポイント」について教授と一対一で対話をしたり、生徒同士でオープンなディスカッションをする。

 EMBAにはグローバル企業のトップ、経営幹部、シニアマネジャークラスの人たちが集まっている。リーダーとしてすでに幾多の困難を乗り越え、成功してきた人たちだ。

 そんな彼らであっても、リーダーシップについて何を学ぶかといえば、まずは「自分を知る」ということなのだ。

 実際、職位が上がれば上がるほど自己を振り返る機会は少なくなるので、リーダー育成で有名な某米国本社企業などでは、自らを振り返るために「メンター」や「コーチング」の仕組みを人事システムに取り入れている。このメンターやコーチには、人に気づきを与えられ、人格的にも尊敬を得ているような人物が割り当てられるという(上司をメンターやコーチに割り当てると、率直に弱みを見せたりしにくいので機能しない)。