心地よいことに素直になれば、自分自身の心の声が聞こえてくる
経沢 アンガーマネジメントも勉強された、と書かれていましたね。学ぼうと思い立ったきっかけは何だったんですか?
前園 事件を起こしたとき、ぼくは泥酔していて、ほとんど記憶がありませんでした。でも、どこかで怒りや溜め込んでいるストレスが関わって、事件につながってしまったのではないか、と考えたんです。そこで、引きこもって何もすることがなかった謹慎中の4ヵ月間、いい機会だなと思い、勉強しました。
経沢 アンガーマネジメントの考え方や根本を知って、腑に落ちたことがありました。自分のなかで自覚がないとしても、怒りが溜まっていると、やはり爆発してしまうのだと。いま、多くの方が日々、多大なストレスを抱えています。今日、コメンテーターとして出演している報道番組で、30代男性が脚にぶつかってきた1歳の子どもの頭を殴ったという傷害事件が取り上げられて、本当につらい気持ちになりました。
前園 心が痛むニュースが多いですよね……。
経沢 多くの人が、分水域までストレスを溜めているような気がして怖くなりました。前園さんは現役時代に「勝たなきゃ」という思いや周囲から期待されるプレッシャーなどが、見えないストレスになっていたことはありませんか。ストレスが溜まらないよう、意識されていたことはありますか?
前園 まず、自分にとって楽しいことを見つけること、でしょうか。それは何でもいいんです。ぼくはジムに行ったり、買い物したりすると、自分が心からいい気分になれると知っています。
経沢 セブン(※2)ちゃんと遊んだりも?
※2 前園さんが飼っているミニブタの名前。体重は70kg。
前園 自宅で遊んだり、一緒にゴロゴロしたりしていますね。ぼくにとってペットは家族の一員。だから、それだけで癒しになります。自分が好きなモノ・コトを自分でつくっていったり、知ったりすることが、ストレスを溜めないための最初の一歩だと思います。
経沢 自分にとって心地よいことがわかると、前よりも「自分自身を感じられる」「自分の状態を把握できる」ようになりませんか?
前園 わかります!
経沢 私もそうなんです。自分にとって心地よいこと、自分が心から好きだと感じる物事をたくさん認識して、用意して、タイミングを見て、自分に与えることが出来るようになったのですが、それは、とても人生にプラスに働きました。たとえ、ストレスがあったとしても、すぐに取り去ることもできるようになりました。
前園 ぼくもあの失敗があったから、考え方や自分との向き合い方を見直したり、変えたりした結果、いまの自分があると思っています。若いときの自分を振り返ると、いまとは全然違いますからね。
経沢 前園さんとテレビ番組で初共演したときに、一流のアスリートだから特別な才能を持って生まれた方なんだな、と勝手に思って接していました。でも、こうしてお話ししたり、本を読ませていただいたりすると、才能だけではなくて、輝きの裏には繊細な感受性や、自らを徹底的にコントロールする意志の強さがあるんだな、と気づきました。だから、ここまで勝ち残る人になれるのだと。『第二の人生』は本当に感動しました。一人でも多くの方に読んでいただきたいです。再びお会いできて嬉しかったです。勉強になりました。
前園 ぼくは自立した女性を見ると「素敵だな」「尊敬できるな」と感じるんです。働く女性は大好きです。シングルマザーとして働き続けて、子どもたちを一人前になるまで育ててくれた母を見て育ったから、なおさらそう思うのかもしれません。経沢さんが新しい世界を開拓し、失敗し、再び立ち上がり……と、働く女性が強くたくましく、しなやかに生きる様が描かれている『すべての女性は、自由である。』を読んで、自立して輝く女性がさらに増えていけばいいなと願っています。今日はぼくも楽しかったです。ありがとうございました。
(完)
経沢香保子(つねざわ・かほこ)
株式会社カラーズ代表取締役社長。
桜蔭高校・慶應大学卒業。リクルート、楽天を経て26歳の時に自宅でトレンダーズを設立し、2012年、当時女性最年少で東証マザーズ上場。
2014年に再びカラーズを創業し、「日本にベビーシッターの文化」を広め、女性が輝く社会を実現するべく、1時間1000円~即日手配も可能な安全・安心のオンラインベビーシッターサービス「キッズライン」(https://kidsline.me/)を運営中。
著書に、『自分の会社をつくるということ』(ダイヤモンド社)などがある。
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