「賢いけど失敗できない人」より「少々バカでも失敗できる人」
ゼロイチを生み出すプロセスでも、おっちょこちょいが威力を発揮します。なぜなら、ゼロイチには「用意された答え」がないからです。
たとえば、Pepperで、孫正義社長から与えられたのは「人と心を通わせる人型ロボットを普及させる」というテーマでしたが、「人と心を通わせるとはどういうことか?」「普及する人型ロボットとはどんなものか?」という問いに対する「答え」は、どこを探してもありません。かつて、誰も成功したことのないことなのですから、当たり前のこと。だからこそ、ゼロイチなのです。
では、どうやって「答え」を見出すのか?
試行錯誤を繰り返すしかありません。たとえば、「普及する人型ロボットとはどんなものか?」という問いに対して、「役に立つロボットだ」と思うならば、実際にそれを試してみる。重い荷物を運べるようにしてもいいし、毎朝起こしてくれるようにしてもいいでしょう。そして、それが「実現可能なのか?」「本当に人に喜ばれるのか?」を検証するのです。その結果、勝算があれば、それをさらに磨けばいいですし、勝算がないと思うならばあきらめればいい。この繰り返しによって、「答え」ににじり寄っていくほかないわけです。
ここで力を発揮するのが、おっちょこちょいです。
なぜなら、深く考え込む前にやってしまうというフットワークの軽さがあるからです。次から次に思いついたものをやってしまう。そして、その結果からフィードバックを受け取って、次のチャレンジに活かしていく。このプロセスをどれだけ速く回せるかが、ゼロイチの成否を握っているのです。
おっちょこちょいですから、ときには、「そんなのうまくいくわけないだろ?」というような、ちょっと”おバカ”なチャレンジをすることもあるでしょう。だけど、僕はそれでいいと思うのです。なぜなら、すぐにやって、すぐに「これはダメだ」とわかれば、同じような失敗を自ら避けるような「相場観」が徐々に身につくからです。むしろ、誰もが「バカな」と思うようなチャレンジをすることによって、もしかすると、誰もが思いもしなかったアイデアに巡り合うかもしれません。とにかくやってみなければわからないのです。
だから、僕は、ゼロイチにおいて、おっちょこちょいは美徳である、と考えています。
おっちょこちょいとは、失敗のリスクがあることに努力を惜しまないことでもあります。おっちょこちょいは、ちょっと”おバカ”かもしれませんが、とにかくやってみることで、無数の失敗から学びつつ、ゼロイチの「答え」を見出すことができるのです。
もちろん、「賢い」に越したことはありません。しかし、それが、ゼロイチを成功させる本質ではありません。実際、「賢いけれど失敗のできない人」よりも、「ちょっと”おバカ”でも失敗できる人」のほうが結果を出しています。「失敗」に対する姿勢こそが、本質的に重要なポイントなのです。