二院制を維持するのであれば
参議院を「大会計検査院」に!

出口 衆議院と参議院の二院制については、どのようにお考えですか。

井堀 今の日本の参議院は、衆議院と同じようなものなので、これは経費の無駄遣いですよね(笑)。だから、衆議院は完全に定数是正をして“1人1票”を徹底し、参議院は廃止するか、残すとしても、もう少し地域の代表として権限を限定してはどうかと思いますね。ドイツのように地方の首長さんを入れるのも一案でしょうし。

出口 衆議院は比例代表をやめて、小選挙区1本にしてはどうでしょう。“1人1票”や電子投票が前提ですが、小選挙区のほうが政権交代が起こりやすく政治のダイナミズムが発揮されると思うのです。
 その代わり、二大政党の存在は必須です。一方の参議院は全国一区の完全比例代表制にして、個人名でなく政党名で選ぶようにする。定数は今ぐらいでいい。そうすれば少数政党の意見が反映されやすくなります。同時に、参議院の権限は決算だけにすればいい。衆議院で予算やそれに必要な法律制定はできます。決算は大きな会計検査院のような参議院で徹底的に精査すれば、翌年から衆議院はおかしなことができなくなるので、その役割を参議院に任せるのです。

井堀 現在の日本の予算制度だと事後的な報告だけで決算のチェック機能がはたらいていませんしね。決算のうち国会で承認せず会計検査院任せにしているケースもありますから、それを参議院できちんと決算をするのはひとつのアイデアだと思います。

出口 一般企業でも、取締役会で承認された投資の成果について半年後ぐらいに社外取締役から問われると、やっぱり緊張感が走りますから(笑)。国も同じで衆議院で法律をつくってそれに伴う施策できちんと結果が出ているのか、参議院が1年かけて検証するという仕組みにしたら、税金の使われ方もよく見えるようになります。お金の調達方法はもちろんですが、使い道や使い方を見える化することが、人々の安心感につながり、ひいては消費の拡大につながると考えています。

井堀 そうですね。景気を上げるためには、足下でもっとできることが色々あると思います。今日はありがとうございました。

出口 こちらこそ、ありがとうございました。

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