【田坂】藤沢さんは、ときおり、タレントやアナウンサーと間違われるようですが、そうではない。もともと、IFISという、金融業界では伝説的なベンチャー企業を立ち上げた。生粋のアントレプレナーであり、それが藤沢さんの原点ですね。

千人の経営者の方々が、真剣に向き合い、大切な話をしてくれるのは、その経営者の方々が、藤沢さんのその原点を感じ取っているからです。起業や経営の経験の無い人が、いくらニコニコ笑って感じ良く接しても、それだけでは、決して深い話はしてくれないでしょう。

その意味で、藤沢さんは、筋金入りなのですね。みなさんも、機会があったら藤沢さんが29歳で立ち上げたIFISというベンチャー企業の伝説を聞いてみてください。古いオフィスの窓から寒風が吹いてくる中でパソコン叩いていたとか、帰れと言われた店頭で何千件の企業データを書き写すということをやってきた、そういう体験が、藤沢さんの聴く力を培ったのですね。

今日も、こうしてニコニコ笑っているけれど、私が藤沢さんとパートナーとして共に歩むことを決めたのは、するべき苦労をしてきた、人様の冷たい姿も見てきた、しかし、それで心が捻じ曲がってしまうのではなく、すべてを糧として前に歩んできた、そんな藤沢さんと共に歩んでみたいと思ったからです。

今回のこの『最高のリーダーは何もしない』という本は、幸い、多くの方々に読んでいただいているようですが、その多くの読者の方々に、仕事のパートナーとして、改めて感謝を申し上げます。文章は、やさしく、わかりやすく書かれていますが、この本は、千人を超える経営者の方々との真剣勝負の結晶だということだけは、最後に申し上げておきたいと思います。

私自身、かなり厳しい目で読ませていただきましたが、一人のリーダーとして、一人の経営者として、一つ一つ「その通りだな」という思いで読むことのできた本かと思います。

そして、この本の行間に、藤沢さんの16年の歩みと成長を感じさせていただいたことが、仕事のパートナーとして、何よりも有り難いことでした。

【藤沢】もう言葉はございません。身に余るお言葉、ありがとうございました。

(対談おわり)

藤沢久美(ふじさわ・くみ)
シンクタンク・ソフィアバンク代表
大学卒業後、国内外の投資運用会社勤務を経て、1996年に日本初の投資信託評価会社を起業。同社を世界的格付け会社スタンダード&プアーズに売却後、2000年にシンクタンク・ソフィアバンクの設立に参画。2013年、代表に就任。そのほか、静岡銀行、豊田通商などの企業の社外取締役、文部科学省参与、各種省庁審議会の委員などを務める。
2007年、ダボス会議(世界経済フォーラム主宰)「ヤング・グローバル・リーダー」、翌年には「グローバル・アジェンダ・カウンシル」メンバーに選出され、世界の首脳・経営者とも交流する機会を得ている。
テレビ番組「21世紀ビジネス塾」(NHK教育)キャスターを経験後、ネットラジオ「藤沢久美の社長Talk」パーソナリティとして、15年以上にわたり1000人を超えるトップリーダーに取材。大手からベンチャーまで、成長企業のリーダーたちに学ぶ「リーダー観察」をライフワークとしている。
著書に『なぜ、川崎モデルは成功したのか?』(実業之日本社)、『なぜ、御用聞きビジネスが伸びているのか』(ダイヤモンド社)など多数。
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