ゼロイチには恐怖心が伴います。誰もやったことのないことにチャレンジするのですから、当然、失敗する確率が高い。「会社に損害を与えてしまうのではないか?」「会社のためにやっても、リスクをとった自分だけバカをみるのではないか?」「評価が下がるのではないか?」「痛い目にあうんじゃないか?」……。そんな不安がこみ上げてきて、最初の一歩を踏み出すのが怖くなるのです。では、トヨタとソフトバンクで世間が注目する「ゼロイチ」のプロジェクトで結果を出してきた、Pepper元開発リーダー・林要さんは、その恐怖をどう乗り越えてきたのか?著作『ゼロイチ』から抜粋してご紹介します。
「恐怖心」を無理に打ち消そうとしない
ゼロイチには恐怖心が伴います。
誰もやったことのないことにチャレンジするのですから、当然、失敗する確率が高い。「会社に損害を与えてしまうのではないか?」「会社のためにやっても、リスクをとった自分だけバカをみるのではないか?」「評価が下がるのではないか?」「痛い目にあうんじゃないか?」……。そんな不安がこみ上げてきて、最初の一歩を踏み出すのが怖くなるのです。この恐怖心こそが、ゼロイチへの最大の障壁かもしれません。
思い返せば、僕自身、ゼロイチにチャレンジするときは、いつだって怖かった。実績ゼロのままLFAにエントリーされたときも、ろくに英語もできないのにF1に配属されたときも、トヨタを辞めてソフトバンクに転職したときも……。もちろん、今もそう。自らの手で起業するのは初めての体験。これまでとは比較にならないリスクがありますから、恐怖心に襲われることは当然のようにあります。
でも、僕は恐怖心を気合いだけで打ち消そうとは思いません。
なぜなら、怖いものは怖いからです。「失敗を怖れるな」とよく言われますが、失敗は誰だって怖い。それは、人間の自然な反応。それを気合いで無理に打ち消そうとしても、単なるやせ我慢に過ぎない。問題の先送りをしていると思うのです。
では、どうするか?
僕は、恐怖心を感じている自分を客観的に見るようにしています。自分の感情や思考、その結果としての行動を、映画の登場人物のように観察するのです。いわゆる「メタ認知」と呼ばれている思考法です。「ああ、今、林要は怖がってるんだな……」と他人ごとのように眺めて、「なぜ、怖がっているのか?」と考えてみるのです。
これだけでも、少し冷静になれます。「怖い、怖い」とだけ思っていると、恐怖心に飲み込まれて身動きが取れなくなってしまいますが、恐怖心を感じている自分を客観的に見つめようとすることで、その感情から一歩離れることができるのです。こうして冷静になるのが、恐怖心を克服する第一歩です。