アナウンサーのコミュニケーション能力に必要なのは、「主張」ではなく、コーディネーションとファシリテーション

ムーギー 今のお話をうかがって思ったのは、あらゆる分野の一流のビジネスパーソンに共通することだなと。一つは自分の仕事の目線が高いということですよね。かつ、学ぶ習慣があり、「言葉」一つでも自分の心の中でPDCAを回している。あとは、『一流の育て方』の第四章「コミュニケーション能力を伸ばすには」でも書かれていますが、コミニュケーション能力が高い人は、やはり人の話を聞くのがうまい。

松尾 でも、キムさんは話を聞くよりしゃべるほうが得意なんですよね(笑)。

ムーギー 私は二流だからいいんです(笑)。実は、私はカナダに姉がいて、その姉と今朝がた話す機会があったのですが、カナダのアナウンサーはもっと主張が強いというわけです。その点、日本のアナウンサーは主張が見えないと。松尾さんはそうした違いをどう思われますか?

松尾 日本の場合、アナウンサーの仕事は、いろんな立場の人がいる中でバランスをとる役割があると思うんですよ。

ムーギー なるほど、アナウンサーの役割は主張する人ではなくコーディネーター。

松尾 そうです。コーディネーターであったりファシリテーターであったりもするんですよ。番組によってこうしたいというものも違うので、その狙いを理解して進行していくんです。

「得意なこと」「好きなこと」を応援するのが、「一流の育て方」の基本

ムーギー『一流の育て方』の二章でも取り上げていますが、将来、自分が好きで得意な天職を探せるようにするための教育として、非常に多くの人が親に感謝していることに「子どものときから幅広い世界に触れる機会をつくってくれた」ということがあります。また、「自分の強みに気づき、伸ばすことを手助けしてくれた」と。松尾さんの場合はどうだったのでしょうか。

松尾 中学生のときに英語の弁論大会があったんです。そのときに県の部で優勝したりして。みんなが褒めてくれるんですね。その頃の私って、周りの人からすればちょっと異色な感じで。

ムーギー え、それはどんなところが?

松尾 英語の暗唱などが好きだったり。ブツブツ一人で言ってたりするんですよ。覚えるために。周りから見たら変ですよね。でも、それを先生も親も「変じゃないよ」って。それでいいんだよって雰囲気をつくってくれていたのが、自分を伸ばすことができた要因かもしれないですね。

 今から思えば、変って思われるぐらいやらないと周りから一歩先に進むことは難しいのかなと。親にも先生にも感謝ですね。

ムーギー それはすごく重要ですね。子どもの多様性を伸ばすために、とにかくその子の得意なこと、好きなことを応援してあげる

 先日、ベンチャーキャピタリストとして活躍されている高宮慎一さんとお話ししたんですが、日本の教育の問題点はラットレースをさせているところだと。つまり、個々の人が何を生み出したいかではなく、決められたことをみんな一斉に決められたやり方でやることに重きが置かれている。それだと、どれだけ速く「回し車」を回してもどこにも進まないし、何も新しいものが生み出せない。

 本当はみんな一人ひとり多様な伸ばせるものを持っているはずなのに、最初にラットレースに放り込まれて負けたら劣等感を持たされます

松尾 わかります。『一流の育て方』にも書かれていたと思うんですけど、そのためにも親がいろんな経験をさせてあげて、いろんな選択肢があるんだって気付かせてあげることが大事ですよね。そのうえで親が、ちょっと背中を押してあげる。

ムーギー子どものときって自分では何が得意かわからない。だからこそ親がいろんな経験をさせ、いろんなものを見せてあげて選択肢を与えてあげることが大事なんだと、本書で紹介しているアンケート調査を読む過程で、痛感しました。

(後編は6月27日公開予定です)