大学生のインターンシップ先企業として、絶大な人気を得ているサイバーエージェント。その人事を統括する曽山哲人氏と、6月に刊行された『絶対内定2018 インターンシップ』の著者である熊谷智宏氏が、インターンシップの本質を突き詰めていく。学生にもっとも支持されるインターンシップの中身とは?なぜ優秀な人材が集まってくるのか?(構成/両角晴香 撮影/宇佐見利明)

熊谷智宏(くまがい・ともひろ) 我究館館長。横浜国立大学を卒業後、(株)リクルートに入社。2009年、(株)ジャパンビジネスラボに参画。現在までに3000人を超える大学生や社会人のキャリアデザイン、就職や転職、キャリアチェンジのサポートをしてきた。難関企業への就・転職の成功だけなく、MBA留学、医学部編入、起業、資格取得のサポートなど、幅広い領域の支援で圧倒的な実績を出している。また、国内外の大学での講演や、執筆活動も積極的に行っている。著書に「絶対内定」シリーズがある。

なぜサイバーエージェントは、
インターンシップに力を入れるのか?

熊谷 サイバーエージェントさんのインターンシップは、就活生にとても人気が高いですよね。『インターンシップでおすすめの人気企業ランキング』(※)でも、堂々の第1位を獲得されています。本日は、人気企業が一体どんなインターンシップを行なっているのか。そのあたりから伺っていきたいと思います。

※調査会社:ポート株式会社 調査対象:2016年卒業予定学生 有効回答人数:317人 調査方法:Webアンケート(複数社投票あり)

曽山 どうぞ宜しくお願いいたします。弊社のインターンシップ・プログラムは、週3〜4回ほど継続的に勤務する「長期型」と、3日から1週間ほどの「短期型」があります。長期型だと参加できる人数が限られますので、補完的に短期型も実施しているんです。

熊谷 長期でのインターンシップを受け入れるとなると、カリキュラム開発や実施にかなりのマンパワーが必要になるはずですよね。それにもかかわらず、プログラムの数の多さに驚かされます。

曽山哲人(そやま・てつひと) 1974年神奈川県横浜市生まれ。上智大学文学部英文学科卒業。1998年伊勢丹に入社、紳士服配属とともに通販サイト立ち上げに参加。1999年、20名程度だったサイバーエージェントに入社。インターネット広告の営業担当として入社し、後に営業部門統括に就任。2005年に人事本部設立とともに人事本部長に就任し2008年に取締役就任。現在は「採用・育成・活性化・適材適所」など人事全般を手がける。社外にもブログやソーシャルメディア、著書による情報発信や人材マネジメントや組織活性化等、幅広いテーマで講演・教育活動も積極的に行っている。近著に「クリエイティブ人事 個人を伸ばす、チームを活かす」(金井壽宏・神戸大学大学院教授と共著。光文社新書)がある。

曽山 プログラム数でいうと、現在、エンジニア・デザイナー系と、ビジネス系合わせて、年間で50コースほど用意しています。そのなかから学生が挑戦したいプランを複数選んで応募することができるインターンシップ「マルチエントリー採用」を弊社は重視しています。

熊谷 なぜ、それほどまでに多種多様なコース展開をしているのですか。

曽山 100人いれば、100通りの才能があるはずです。それなのに採用の入り口であるインターンのコースが画一的でワンパターンだと、その方法に合った人しか採用できず、それ以外の優秀な人材を見落とす可能性があります。そうなってしまうことは、我々企業側にとって大変もったいない話です。

 また、学生にとっても、インターンシップという通常の就職活動とは違う入口から企業と出会うことで、新たな発見があります。元々は興味がない会社でも、インターンシップの内容が自分の興味のあるジャンルであれば受けてみたいと思うでしょうし、そこで大きな学びを得てもらったり、自分の新たな才能に気づき、開花させられるようなインターンを提供したいと思っています。

熊谷 学生とのミスマッチをなくすためにインターンシップを行う企業は多いですが、学生の才能を開花させるため、というのは珍しいですね。

曽山 もちろん弊社も、自社のことをもっと深く知ってもらいたい気持ちは強いですが、学生の才能開花においても強く意識しています。サイバーエージェントのビジョンに「21世紀を代表する会社を創る」とありますが、これを私なりに咀嚼して言い換えると、入社した社員が「自分がこれまで知り得なかった才能に驚く会社であること」だと思うんです。入社した3年後に、「まさか自分が、こんなことができる人間だとは思わなかった……!」と思える環境をつくれる会社こそが、成長し続けられる。そう考えています。

熊谷 就職活動の本番を迎える前に、自分の才能に気づけるチャンスを提供しているわけですから、学生から圧倒的に人気が出るのも当然ですね。御社ほど力を入れているのであれば、インターン経験者から内定者を出すことが、得策のように思いますが。

曽山 ええ、まさしく。2016年卒向けの採用は、インターン経験者が6割、一般的な本選考経由が4割という実績があります。さらに2017年卒採用ではインターン経由をもっと増やし、7〜8割まで高められればと思っています。