海だけでなく空でも…
各プラットホームはヘリポートを備えており、これらはすべて無人機を含む航空機の離発着を可能にする。レーダーもミサイル発射装置も配備可能だ。これらの「洋上基地」と中国本土の軍事施設、それに中国が配備を開始した大型巡視船「海警2901」を組み合わせれば、日本の防衛能力を粉砕して東シナ海を奪うことも不可能ではない。
「2901」は1万2000トンの大型艦船である。中国は「2901」に必要な強力なエンジン10隻分をドイツから購入済みであることから、少なくとも「2901」を10隻は建造すると見られている。
日本が尖閣諸島防衛で新たに建造した海上保安庁の巡視船は1000トン級が6隻、3000トン級が2隻である。1万トンを超える大型船は海保にはない。海上自衛隊にはあるが、砕氷艦の「しらせ」(1万2500トン)を除けば5隻である。
1万トンを超える船は、どの海域であれ長期滞在が可能である。また、「2901」は射程10キロメートル、コンピューターで安定した射撃ができる72ミリメートル砲を備えている。日本の海保の巡視船の砲は20ミリメートルと30ミリメートルで射程は2キロメートルである。船体が小ぶりなため揺れも大きく、射撃の命中度は「2901」に比べて疑問が残る。
中国の軍拡は海上だけではない。南シナ海に見られるように空でも見逃せない重大事が起きている。前述の第4世代戦闘機の量産である。航空自衛隊は293機のF-15戦闘機を有しているが、中国はなんとそれとほぼ同数の第4世代戦闘機を2010(平成22)年からのわずか3年で製造してしまった。
現在、保有している第4世代戦闘機は日本の293機に対して中国が731機である。加えて、彼らは毎年30機から50機と見られる量産態勢で戦闘機を増やし続けており、年間5機がせいぜいの日本との差を広げている。
いま政治家にとって最大かつ最重要の責務は、わが国が南シナ海沿岸諸国と同じ運命をたどらないためには何をすべきか、防衛上の課題を絞り込み、直ちに解決策を講ずることではないか。
アメリカの協力を求める前に、自助努力が必要である。その第一歩は海保と自衛隊の予算の思い切った増額であろう。船も航空機も潜水艦も、海保の隊員も自衛隊員も、少なくとも日本を守るのに必要な分だけは増やす方向に明確に舵を切るべきだ。
しかし、国会では、自民党議員の失言が続き、まともな議論ができない状況に陥っている。民主党(現・民進党)はもっとひどい。岡田克也代表は安全保障関連法の破棄を求め続けているが、いったい日本周辺に迫り来ている脅威からどのようにして日本を守るつもりなのか。目の前わずか5センチほどしか見ないような、視野狭窄の発想から抜け出さない限り、同党の存在意義はない。国益を守る政治も行えない。
(『週刊ダイヤモンド』2016年3月5日号の記事に加筆修正)