8月15日は終戦の日。今年は戦後71周年にあたる。昨年発表された首相談話の際にも、さまざまな議論があったが、そもそも私たちはこの戦争をどのように捉えるべきだろうか?マスコミで報じられているような「たった1つの戦争」という見方は正しいのだろうか?この考え方について、人気ジャーナリスト・櫻井よしこ氏の最新刊『凛たる国家へ 日本よ、決意せよ』の中から紹介していこう。

日ソの戦いは日本の侵略か

櫻井よしこ(さくらい・よしこ)ベトナム生まれ。ハワイ州立大学歴史学部卒業。「クリスチャン・サイエンス・モニター」紙東京支局員、アジア新聞財団「DEPTH NEWS」記者、同東京支局長、日本テレビ・ニュースキャスターを経て、現在はフリー・ジャーナリスト。
1995年に『エイズ犯罪 血友病患者の悲劇』(中公文庫)で第26回大宅壮一ノンフィクション賞、1998年には『日本の危機』(新潮文庫)などで第46回菊池寛賞を受賞。2007年「国家基本問題研究所」を設立し理事長に就任。2011年、日本再生へ向けた精力的な言論活動が高く評価され、第26回正論大賞受賞。2011年、民間憲法臨調代表に就任。
著書に『論戦』シリーズ(ダイヤモンド社)、『「民意」の嘘』(花田紀凱氏との共著、産経新聞出版)、『日本の未来』(新潮社)など多数。

8月になると、どの人の胸にも広島、長崎、2つの都市を襲った悲劇が映像としても、人々が背負った苛酷な運命の物語としても、蘇ってくることだろう。広島、長崎の前には東京、神戸をはじめ、多くの都市が空襲を受けた。業火に焼かれた人々の無念を忘れてはならないとしみじみ思う。

昨年の8月14日、安倍首相の戦後70年談話が発表された。その中に「侵略」の文字をどうしても入れるべきだ、あるいは入れるべきではないという議論が続いていた。民主主義の国である以上、主張や意見が分かれるのは当然のことだ。そこであの大東亜戦争をどのように考えたらよいのか、一緒に考えてみよう。

私は大東亜戦争についての考え方の基本を田久保忠衛氏に教わった。氏は大東亜戦争が3つの戦争から成り立っていると認識することが大事だという。1つめの戦争が日中戦争、2つめが日米戦争、3つめが日ソの戦いだ。

それぞれみんな性格が違う。性格の全く異なる3つの戦争を「侵略」という2文字でくくってしまうのは適切ではない。侵略という言葉がいかにあてはまらないかは、3つめの日ソの戦いを振り返れば明らかだ。

当時、日ソ間には日ソ中立条約があった。同条約は1946(昭和21)年4月まで有効だった。ところが、ソビエト側はこれを一方的に破り、日本に攻撃を仕掛けてきたのだ。

1945(昭和20)年8月9日。すでにその3日前に広島に原爆が落とされ、長崎に原爆が落とされるその日をめがけて、157万人のソビエト軍が、一斉に嵐のように南侵した。日本にとっては驚愕以外の何ものでもなかった。ソ連の裏切りである。

日本政府は中立条約の相手国であるソ連を信じて、アメリカをはじめとする連合国側との停戦を斡旋してくれるように、最後の最後までソ連に頼み続けていたからだ。日本国政府の意図をソ連は十分に知り、仲介するふりをしながら、日本を騙して、8月9日に突然攻め込んできたのである。