2019年4月に罰則つき残業規制がスタートすることもあり、「働き方改革」は喫緊の課題となっている。そんななか、プレッシャーが増しているのがプレイングマネジャー。個人目標とチーム目標を課せられるうえに、上層部からは「残業削減」を求められ、現場からは「仕事は増えてるのに…」と反発を受ける。そこで、1000社を超える企業で「残業削減」「残業ゼロ」を実現してきた小室淑恵さんに『プレイングマネジャー「残業ゼロ」の仕事術』をまとめていただいた。本連載では、本書のなかから、プレイングマネジャーが、自分もチームも疲弊せずに成果をあげるノウハウをお伝えしていく。

1000社で実証した「残業ゼロ」の仕事術

「結果を出せ」と部下に迫るマネジャーが、結局「結果」が出せない理由小室淑恵(こむろ・よしえ)
株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長
2006年に起業し、働き方改革コンサルティングを約1000社に提供してきたほか、年間約200回の講演を依頼されている。クライアント企業では、業績を向上させつつ、労働時間の削減や有給休暇取得率、社員満足度、企業内出生率の改善といった成果が出ており、長時間労働体質の企業を生産性の高い組織に改革する手腕に定評がある。主催するワーク・ライフバランスコンサルタント養成講座は全国で約1600人の卒業生を育成し、認定上級コンサルタントが各地域で中小企業の支援も行っている。政府の産業競争力会議民間議員、経済産業省産業構造審議会委員、文部科学省中央教育審議会委員、厚生労働省社会保障審議会年金部会委員、内閣府仕事と生活の調和に関する専門調査会委員などを歴任。著書に『働き方改革』『労働時間革命』(ともに毎日新聞出版)、『6時に帰るチーム術』(日本能率協会マネジメントセンター)など多数。

『プレイングマネジャー「残業ゼロ」の仕事術』
本日発売になった私の著書のタイトルをご覧になって、「そんなことができるのか?」と思われる方も多いのではないでしょうか。現場の仕事を担当しながら、チームのマネジメントもしなければならないプレイングマネジャーは、とにかく多忙。会社から課された数値目標のプレッシャーをヒシヒシと感じながら、日々、残業をいとわず頑張っていらっしゃるはずです。

 出社すれば社内会議のハシゴをして、やっと自席についたと思ったら、メンバーから「ちょっといいですか?」と声がかかる。メンバーからの報連相が一段落して、ようやく自分の仕事に手がつけられると思ったら、突発案件の対応に追われる。結果、定時に帰れないどころか、手つかずの仕事を家に持ち帰らざるをえなくなる。しかもそれは、本来は部下に任せたい仕事。部下が手いっぱいだから、仕方なく自分がやっている……。
 そんな日常を送るプレイングマネジャーにとっては、「残業ゼロなんて夢物語だよ」というのが本音かもしれません。

 私が経営する株式会社ワーク・ライフバランスは、主に経営層から要請を受けて現場の「働き方改革」をサポートする事業を展開していますが、実際に多くのマネジャーが最初はそのような反応をされます。皆さん、日々、できる限りの努力をしていらっしゃるのですから、それも当然の反応だと思います。

 いえ、むしろ「残業ゼロなどという“かけ声”は迷惑だ」と考えている方もいらっしゃるかもしれません。上層部から「残業ゼロ」「残業削減」を求められ、現場のメンバーからは「仕事は増える一方なのに、サービス残業をせよということですか?」などと反発を受ける。そんな板挟みのなか孤軍奮闘を強いられ、心身ともに疲れ果てている方も多いのではないでしょうか。

 しかも、6月29日に国会で「働き方改革法」が成立。2019年4月から労働基準法が改正され、月間の労働時間の上限規制が罰則つきで施行されますから、現場のマネジャーに対する「残業削減」を求める圧力はさらに強まっていくことが予想されます。

 でも、必ず現状を変えることができる―。
 私は、そう確信しています。
 実際、私たちの会社は創業以来、「増収増益」かつ「残業ゼロ・有給取得率100%」を達成しながら、働き方改革コンサルティングを提供した約1000社においても、残業時間の大幅削減と業績向上を果たしてきました(社長である私もプレイングマネジャーです)。

 といっても、強制的に残業を削減するようなやり方ではありません。職場の生産性を高めるために、投入する労力・時間を最小化して、成果の最大化を図るアプローチを徹底しています。これまで試行錯誤の連続ではありましたが、チームの生産性を高め続けることによって、残業ゼロを実現する「手法」が存在することを実証してきたと自負しています。

 クライアントも、ムリすることなく勤務時間を削減して、業績を向上させるサイクルが継続している企業・自治体ばかりです。「職場の雰囲気も明るくなり、日々の仕事を楽しく進められるようになりました」「“リバウンド”(しばらくすると元に戻る)せずに、よいサイクルが回り続けています」と喜びの声をいただく機会にも恵まれています。

 私たちが確立してきた改革のプロセスを丁寧にたどっていただければ、必ず、プレイングマネジャーを含むメンバー全員が長時間労働から解放され、生産性高く仕事ができるチームに変わると確信しています。