世界で実績を残してきた投資家は、将来の動向よりも、企業の歴史を重視しているという。一般的に「株式投資は将来を予想することが大事」という思い込みが強くあるが、将来予想などしなくても投資をすることが可能だ。『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資法』を上梓した泉田良輔氏に、個人でも簡単にできる株式投資のポイントをうかがった。

プロの投資家が注目する「経済危機のときの決算書」Photo: Adobe Stock

経済環境が最悪のときこそ
企業の強さが見えてくる

 決算書を見る際、重要なポイントがあります。それは、マクロの経済環境が「最悪」だったときに、その企業の決算はどうであったかを確認するということです。

 過去、経済環境が最悪だったということで思い出されるのが2008年のリーマンショックです。米国のサブプライムローンバブルのつけが回り、世界の金融システムが止まって、世界的な不況が訪れたのです。その結果、多くの企業決算が赤字となりました。

 ただ、過去10年の決算書では、リーマンショックが含まれる2008年度決算はもはや含まれません。リーマンショックは、10年以上も前の話となってしまいました。したがって、当時の決算がどうであったのかを知りたければ、あえて見にいくことが必要です。

 では、リーマンショックの影響があった2008年度の決算をあえてチェックするメリットはどこにあるのでしょうか。

 リーマンショックのような最悪の状況をどうやり過ごしたかというのは、企業の収益性や経営者の手腕を確認するまたとないチャンスです。また、収益性や財務体質のストレステストもチェックできます。これはまたとない機会だからです。

 もっとも、リーマンショックからはすでに10年以上が経過しているので、当時の経営者はすでに交代しているかもしれませんが、収益性や財務体質といった企業の質を確認することはできます