写真:マンション写真はイメージです Photo:PIXTA

コロナ禍で下がるかに見えた都心のマンション価格が、むしろ上昇したのはなぜだろうか。東京カンテイが持つ豊富なデータと知見を駆使して、実証的に考察。今後の価格動向を含め、上下2回で見ていこう。(東京カンテイ上席主任研究員 井出 武)

マンション価格が下がる3つの要因
コロナ禍に当てはまるのか考えてみた

 新築マンションについて、1990年代の“失われた10年”やリーマン・ショックの経験から、価格が下がりやすいとのイメージを持っている人は、新型コロナウイルスの感染が拡大した昨年来、マンションの価格が一向に下がらないばかりか、むしろ上昇していることをいぶかしく思っているかもしれません。

 実は私も「下がるかもしれない」と想像した一人ですが、不動産業界の人とお話をすると、多くの人が同様に下がると考えていたことがわかりました。

 基本的なことですが、とても大切なことなので、マンション価格が下がるときに市場で何が起こるのかを確認したいと思います。価格下落の主な要因は、下記の3点にまとめることができます。

●買い手がいなくなってしまう
●マンションの売り手が価格を下げる
●売りたい人が買いたい人を大きく上回る

 非常に単純化して書いています。買い手がいなくなる背景には、少子化でマンションを購入したいという、そもそもの市場規模の縮小や、現在では価格が高くなっているので経済的な要因で買えない、利回りが悪いので買う気にならないなど、様々な要因が存在します。

 買い手がいなくなる、あるいは少なくなると、売り手はそんな中でも少しでも売れるようにいろいろな手を考えなければなりません。金融機関から融資を受けてマンション開発プロジェクトを行うデベロッパーは、早く完売させないと、資金が回収できず融資の返済が困難になりますので、価格を下げて早めに売り切るという策をとります。これが2番目の変化です。

 3番目の変化は日常的に起こっている可能性があります。例えば株価でしたら、株主が一定の利益を得るために価格の上昇した株を売却する“利益確定売り”が市場の中で優勢になると、景気とは関係なく株価が下がることがよく見られます。