学校の垣根を越える私学の共同研修

――ところで、神奈川県は私学への理解は早かったのでしょうか。

工藤 日本の私学助成自体は、1975年に自民党の議員立法によってできました。神奈川県はそれ以前に、内山岩太郎知事の時代から私学に対して理解があったため、高島台(神奈川区)の私学会館も中高だけで持つことができました。

――最初の外国人居留地があった土地柄ですから、私学への理解もあったと。

工藤 そうですね。神奈川は近代私学発祥の地です。開港により横浜が発展して、それとともに宣教のために多くの修道会が進出してきました。そして、カトリック、プロテスタントを問わず学校を作ったこともあり、多くの私学が集まったということです。

――カトリックの男子校は、東京には暁星だけですが、横浜にはなぜ多いんですか。

工藤 カトリック男子校はいずれも戦後に設立された本校と栄光学園とサレジオ学院の3校です。女子校はそれ以上で7校あります。

 私学はそれぞれ独立しているけれども、ネットワークを組む。それがこれからの私学の教育の方法だと思っています。だから、本校のイベントでもいろいろな学校とチームワークを組んでいるわけです。この3月も、洗足学園と一緒にジェンダーに関する英語のイベントを企画し、実施する予定でした。男子校、女子校という枠組みを超えて、お互いに積極的に交流しようという流れが強くなっていることも近年の特徴です。

 神奈川県と姉妹都市の米国メリーランド州での海外研修も、2020年度は実施できなかったけれども、2019年8月には、湘南白百合学園、洗足学園、横須賀学院、サレジオ学院など神奈川の私学が参加して行いました。生徒同士が学校を越えて結び付くことができました。コロナが収束したら、県の協力でこの交流事業も再開するつもりです。

 あと、神奈川県の私学では、高校入学時に必要な費用の支払いを4月の入学後まで待ちます。中3の時に家計が苦しい場合、申請してもらえれば、入学金などの補助も県からあります。県の補助金が出るまで学校が待つという例は全国的にも珍しいと思います。

――4月には学校にお金が入らないんですね。

工藤 それは仕方ありません。5月には県から直接入金されますから。また、最近は国の就学支援金に加えて、神奈川県でも学費補助への上乗せがあります。さらなる充実が望まれますが、最近は私立高校を選択する家庭も増えています。2021年の高校入試では、定員に満たない公立校もかなりあったというのが現実です。こうした状況もあって、きめ細かく対応してくれる私学への期待もますます高まっています。

 先生方の異動のない私学は、これからも首都圏の子どもたちの心のふるさとになっていかなければ、と思っています。温もりを伝え続けることこそが、私学の使命ですから。