
岸 博幸
内閣改造により閣僚の顔ぶれが一新されたが、安倍首相が早速打ち出した高齢者雇用の延長に関する指示は、不安を募らせるものだった。昭和の雇用ルールの延長に過ぎないのではないかという印象を、持たざるを得ないからだ。

自民党総裁選の直前、日本の総合格闘技界最大のスターであった山本KID徳郁選手が、胃ガンで逝去した。山本KID氏の最大の魅力は、そのファイトスタイルにあった。それと比べて、安倍首相や石破氏が頼りなく見えてしまうのだ。

北海道を襲った震度7の大地震により、北海道全体で電力供給が途絶える“ブラックアウト”(大規模停電)が日本で初めて起きた。その対応を見るにつけ、日本人のリスク意識は低いと言わざるを得ない。学ぶべき教訓を考えてみたい。

自民党総裁選は安倍晋三首相と石破茂氏の一騎打ちとなったが、安倍首相と石破氏のどちらかが総裁になっても1つだけ言えることは、日本経済の先行きは非常に厳しいということだ。これまでの両者の主張をまとめてみよう。

行政の中で規制改革が最も進んでいない分野は教育だ。三選が確実視される安倍首相は、教育改革で若者世代の能力の向上に本気で取り組むべきだ。その際、不祥事が相次ぎ、改革の壁となっている文科省の解体にも踏み込む必要がある。

日頃、マスメディアの報道の偏りに憤ることは多いが、最近はその思いを強くする出来事が続いている。野村修也弁護士に対する処分、2年目を迎える小池都政の政策に関する報道から、マスメディアの「悪いクセ」を考える。

延長国会の最大の焦点は、IR法案を成立させられるか否かになってきた。そのIR法案に反対する野党は、カジノ、つまりギャンブルへの依存症を防ぐ対策が不十分であることを声高に叫んでいる。しかし、憂慮すべきはそれだけだろうか。

民泊新法に伴い、日本での民泊ビジネスは大混乱に陥った。民泊仲介サイト最大手のエアビーアンドビーは6月に入り、4万件の掲載物件の表示を止めてしまった。背景には、政治家と役人によるお粗末すぎる「人災」の影響が見える。

安倍政権の森友問題への対応がひどいのは言を俟たないが、政権の緩みはそれだけではない。騒動の陰に隠れて目立たないが、今年の成長戦略はそれ以上にひどい。なぜ、これほどやる気が感じられない中身となっているのか。

愛媛県知事が新たな文書を国会に提出し、加計学園問題がまた盛り上がっている。安倍首相を守る側の答弁も杜撰だが、問題は攻める側の野党・メディアがあまりにも不勉強なことだ。内閣府職員が加計学園の車を使用したことへの批判は、それを象徴している。

国会で働き方改革法案を巡る論戦が再開されたが、残業時間に上限を設定しようとする今の法案の中身では、生産性の向上は望めない可能性が高い。テレビ業界をはじめ、残業の規制による組織の非効率化はすでにあらゆる分野に見られるからだ。

森友学園問題、加計学園問題、自衛隊の日報問題、そして財務次官のセクハラと、安倍政権はまさに不祥事続きだ。官邸はいまだに政権運営で強気の姿勢を維持しているようだが、支持率の低下に歯止めがかからない。政権が起死回生を図るための心得とは。

森友学園問題と自衛隊日報問題に加え、加計学園問題で官邸の関与を示唆する文書までもが出てきて、安倍政権は窮地に立たされた観がある。思えば、政権を支える官僚たちはあまりにも脇が甘かった。なぜこんな事態になってしまったか。

政府の規制改革推進会議が検討している放送改革の内容に、批判が高まっている。そもそもこの改革、民間からも望まれていないのに、なぜ机上の空論だけで話が進んでいるのか。その内容を検証すると、やはり改革というより“改悪”としか言いようがない。

野党やメディアが連日大々的に森友問題を追及し続けていますが、野党の政治家や識者の発言、さらには報道ぶりを見ていると、霞が関で20年働いた経験からはちょっとズレているというか、大事な論点を見逃してしまっているのではないかと感じます。

働き方改革法案を巡り、裁量労働制に関する厚労省の調査の杜撰さが次々と明らかになっている。しかし、メディアや野党が追及すべきは裁量労働制ばかりではない。見えないところでは、官僚によるもっとひどい「改革潰し」が行なわれているのだ。

既得権益の維持を最優先し、族議員や官僚は改革に反対してきた。外部のステークホルダーの強硬な反発を恐れて、改革に逡巡してしまうケースもある。しかしここにきて、自民党が反発も受けないのに自ら改革を潰そうとする、新たなパターンが出現した。

日本ではあまり知られていないが、先週開催されたダボス会議で、ジョージ・ソロス氏が自身の演説のなかで、スマホやSNSがもたらす悪影響について警笛を鳴らした。日本人の問題意識は、こうしたグローバルの意識とかけ離れてはいないだろうか。

米国でアップルの大株主である2つのファンドが同社に対して、スマホの子どもに対する悪影響に警鐘を鳴らすよう求める公開書簡を提出した。iPhoneを発売する企業の大株主の行動として、注目に値する。内容はあまりにも正論だ。この行動から日本人が学ぶべき点を考えよう。

この数年間ブームだった地方創生も、今年は真価が問われる年になりそうだ。政府主導で幼児教育の無償化が始まるため、従来の自治体独自の取り組みでは差別化ができなくなるからだ。そんななか、有識者を中心に新たな地方活性化の実験も始まっている。
