井手ゆきえ
第60回
究極の個人情報である遺伝情報。それに基づくテーラーメード医療の実現に向けた動きが始まっている。その一つが遺伝子多型診断で、個々人で微妙に異なる遺伝子配列の違いを読み解き、医療に生かそうというものだ。

第59回
外科的治療の低侵襲(キズが小さく身体の負担が少ないこと)化は世の流れ。がん治療も例外ではない。肝がんに対する「ラジオ波焼灼療法(RFA)」はその代表だ。

第58回
今年1月に承認された抗凝固薬のダビガトラン(商品名プラザキサ)。「血液サラサラ」状態を保ち、血液の塊が引き起こす脳卒中を予防する。一般にはなじみが薄いのでピンとこないかもしれないが、この領域では半世紀ぶりの新薬。いろいろな意味で「待望の」という枕詞がつく薬なのだ。

第57回
今年1月、国内でわずか30人ほどしか確認されていない稀少難病、クリオピリン関連周期熱症候群(CAPS)の治療薬「カナキヌマブ」の承認申請が提出された。年内のスピード承認が望まれる。

第56回
脳梗塞で血管内に詰まった「血の塊(血栓)」を物理的に回収する血管内治療用の機器が、昨年10月から保険診療で使えるようになった。この「血栓回収デバイス(商品名メルシー・リトリーバー)」は「発症8時間以内」までの患者が対象だ。

第55回
この数年、熾烈な開発競争が繰り広げられている抗体医薬。免疫反応を起こすタンパク質(抗体)を人為的に作製したもので、これを投与すると、病原体やがん細胞の表面にある標的(抗原)にくっつき“実弾”になる免疫細胞を呼び寄せて標的細胞を殺傷する仕組みだ。

第54回
外科手術で手術創(キズ)が回復するまでの期間ほどつらいものはないが、2004年、米国から「お腹の壁をいっさい切らない」という究極の低侵襲手術法「NOTES」が報告された。コレがなんと「口や膣、肛門など人間が自然に持っている孔を経由して、内視鏡をお腹の中に挿入する」方法なのだ。

第53回
アルツハイマー型認知症(以下、AD)患者の脳を死後解剖して観察すると「βアミロイド」というタンパク質がベッタリ蓄積していることが知られている。なんとAD特有の症状が目立つ10~20年前から蓄積が始まっているという。

第52回
昨年1月の欧州、10月の米国に続き今年3月、ようやく日本でも「トラスツズマブ(商品名ハーセプチン)」が「HER2過剰発現が確認された治癒切除不能な進行・再発胃がん」の治療薬として承認された。トラスツズマブはもともと乳がんの治療薬として開発された分子標的薬だ。

第51回
昨年末からアルツハイマー型認知症(略称AD)治療薬の3剤が相次いで承認を了承された。この領域では約10年ぶりのこと。夏頃にはようやく、世界標準の4製剤が使用できるようになるわけだ。

第50回
もともと戦地で負傷した兵士を遠隔操作で治療する技術として開発されたロボット手術だが、医療用機器として認可された後もそれへの期待は高かった。 2001年には、実際に光ファイバーの海底ケーブルを通し米国‐フランス間で大陸間横断の胆嚢手術が行われている。

第49回
国内で初めて手術ロボット「ダ・ヴィンチ」による心臓手術を行った渡邊剛・金沢大学医学部心肺総合外科教授(東京医科大学心臓外科教授を兼務)はある日、入院患者専用ラウンジの光景に目を見張った。

第48回
昨年、足の親指の激痛に襲われたCさん、42歳。整形外科で痛風と診断、消炎鎮痛剤が処方された。医師から運動して痩せるよう勧められた──。

第47回
強い日差しやクルマのライトに目がくらむことが多くなったVさん、56歳。老眼も進み、仕事に支障が出始めたため、眼科を受診すると白内障と診断された──。

第46回
消化器内科で萎縮性胃炎と診断されたTさん、47歳。ヘリコバクター・ピロリ菌の感染もわかったので自費で除菌療法を受けることにした。じつは胃がん家系なのだ──。

第45回
商談中に突然脈が速くなったSさん、54歳。一過性だったが、以来ちょっとした動悸も気に病んでしまう──。

第44回
ある日、息苦しさと動悸に襲われ「死んでしまう」と恐慌を来したRさん、47歳。心臓外科での検査は異常なし。しかしその後も発作は続き、不安のあまり外出できなくなった──。

第43回
小学5年生の娘の髪が突然抜け、円形脱毛症と診断されたQさん、45歳。とっさに「治るんでしょうか」という言葉が口をついた──。

第42回
昨年末、歌手の桑田佳祐さんが食道がんから見事に復帰した姿を目の当たりにしたPさん、56歳。同じ病気で闘病中だけに、自らを重ねずにはいられなかった──。

第41回
胆石手術の事前準備で血液検査を受けたOさん、56歳。術前に別室に呼ばれ、主治医からHIV(ヒト免疫不全ウイルス)陽性を告げられた。息が詰まり頭の中が真っ白になった──。
