井手ゆきえ
「肥満症」治療薬が登場、外科手術に匹敵する効果の一方で重大な副作用も
日本でも「肥満症」を適応としたセマグルチド(商品名ウゴービ)が承認された。糖尿病の治療薬として使われている薬剤と同じ成分で、週1回の皮下注射剤だ。最低用量から段階的に増量し、糖尿病治療薬の2倍以上に相当する最大2.4㎎まで増やすことができる。

HPVの「9価」ワクチンが公費で接種可能に、対象は小6~高1女子
4月から、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染を予防する9価HPVワクチンが公費で接種できるようになった。9価ワクチンは、ハイリスク型のうち9種類の感染を防ぐ。すでに定期接種が行われている2価、4価ワクチンよりも高い感染予防効果(8~9割)が期待できる。

早期の前立腺がん、治療しても経過観察でも死亡率は変わらず【英オクスフォード大調査】
男性が新規に診断されるがん種の第1位は前立腺がんだ。進行・増殖が遅いがんの代表で、5年生存率はほぼ100%、10年生存率も9割を超える。それだけに診断後の治療に迷う。がんが前立腺の内部にとどまる「限局性前立腺がん」での治療の選択肢は、外科的な前立腺全摘出術、放射線治療、そして定期的に検査を受けながら無治療で経過を診る「積極的監視療法(監視療法)」の3つ。

スキルス胃がんと飲酒の関係、お酒に弱い人は要注意!
早期発見で長期生存がかなうイメージがある胃がんだが、死亡者数は男性が肺がん、大腸がんに次いで3位、女性も第5位と決して侮れないがんだ。特に、スキルス胃がんに代表される「びまん型胃がん」は、早期発見が難しいうえに、既存の治療法では経過が思わしくない。飲酒が胃がんの発症リスクになることは以前から指摘されており、研究者は「お酒に弱い人が飲酒をする際は、注意が必要」としている。

大学生の健康情報リテラシー、85%が「問題あり」か「不十分」
コロナ禍で分かった健康リスクのひとつに、ヘルスリテラシー(HL)の低さがある。HLは、ちまたに溢れる健康情報から、科学的に適正なものを選択し、自分と周囲の健康を守る行動に結びつける能力だ。情報弱者はさておき、情報収集に長けた若者はどうだろうか。

性的欲求低下障害に対する、神経ペプチド「キスペプチン」の効果は?
先進国全体で出生率が下がりつつある。歯止めをかけたい行政は、あの手この手を試しているが芳しくはない。生物として「治療」を期待する向きもある。その一つが性的欲求低下障害(HSDD)に対する、神経ペプチド「キスペプチン」の投与試験だ。

愛犬にも「がんの血液検査」を、7歳前後を目安に
愛犬の寿命が延び、人間と同じような健康管理を必要とする時代になった。従来、犬の「がん検診」は問診や触診頼みで早期発見が難しかった。しかし近年、体液に含まれるがん細胞やがん由来の物質を解析する「リキッドバイオプシー」が実用化されたことで、血液検査による早期発見が期待されている。

睡眠と緑内障の関係は?無呼吸症候群にも要注意
日本人の中途失明原因の1位は緑内障だ。視野の一部が徐々に欠ける病気で、40歳以上の5%、60歳以上の1割が罹患していると推測される。中国・四川大学西中国病院の研究グループは、睡眠時間の長短、クロノタイプ(朝型・夜型)および、いびきや日中の眠気など睡眠の質を表す指標と、緑内障との関連を検討した。

喫煙によるコロナ重症化リスク、紙巻きと加熱式を併用者で高くなる
新型コロナウイルス感染症の位置づけが5類へ変更される。「感染する/させる」機会が増え、診療現場の混乱は必至だ。せめて重症化の芽は摘んでおきたい。喫煙も重症化リスクだが、加熱式たばこの情報が少なかった。そこで大阪公立大学の研究者らは昨年2月、国内で発売されている加熱式たばことCOVID-19重症化リスクとの関連を調べている。

青学陸上部所属ランナーの腸内細菌を調査、「ある菌種」が走行タイムを改善
近年、腸内細菌の多様性が持久運動のパフォーマンスを向上させるとの報告が増えている。慶應義塾大学の研究グループは、青山学院大学陸上競技部(長距離)所属の48人と一般男性10人の腸内細菌叢を比較した。

遠隔手術はここまできた!250km離れた患者のがんを摘出
コロナ禍の影響で遠隔診療への扉が開かれた。今は診断や慢性疾患の経過観察、医療相談が主だが、最終目標の一つに遠隔ロボット手術がある。昨年末、専門誌に掲載された中国と米国の研究者による「実装検証」では、中国山東省・青島大学附属病院の泌尿器専門医が5G(第5世代移動通信システム)を介して、遠隔ロボット手術を実施した。

2月22日は「頭痛の日」、片頭痛治療は予防の時代へ
今月22日は「猫の日」だが「頭痛の日」でもある。一口に頭痛といっても、基礎疾患によらない「一次性」と脳卒中や感染症など原因が明らかな「二次性」に分類される。一次性頭痛の代表は片頭痛だ。国内の患者数は800万~1000万人と推計され、男女比では1対4と女性が多い。この数年、片頭痛の治療に大きな変化が訪れている。

水分補給でアンチエイジング、慢性疾患リスクも減少!?
飲み水を制限してマウスを飼育すると臓器の老化がより早く、およそ6カ月──人間でいえば15年分の寿命が縮む。慢性的な軽度の脱水は老化を早めるらしい。人間ではどうだろう。

「低体重」は重大な健康リスク!6種類の心血管疾患で検証
コロナ禍の影響で肥満の健康リスクが注目されたが、低体重は急性の心血管疾患(CVD)で院内死リスクになるようだ。神戸大学の研究グループは、急性のCVDで緊急入院した人たちが治療のかいなく院内で死亡する確率と、体格指数(BMI)との関係を調べている。

階段の1段抜かしなど高強度の身体活動、「1~2分×1日3回」で死亡リスクが低下
健康のための「運動のススメ」には辟易するだろうが、ちょいと耳を傾けてほしい。日常生活で単発的に発生する高強度の身体活動(VILPA)──たとえば電車に乗り遅れそうになり、駅の階段を1段抜かしで駆け上がるなど──と死亡リスクとの関連を調べたところ、運動強度が高いほど、死亡リスクが低下することがわかった。

コロナを抑える「湿度」は40~60%がいいらしい、米MITの研究より
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との共存も4年目を迎えた。ワクチンや治療薬も一通り出揃い、私たちはなんとか適応しようとしている。一般家庭の感染対策は、換気、手指消毒、臨機応変なマスク着用と変わりはないが、もう一つ、「湿度管理」も使えそうだ。

外科医=男性は時代錯誤、手術成績に男女差なし
世に偏見は多いが「外科医は男性じゃなきゃダメ」という思い込みは結構、根強いのではないだろうか。日本バプテスト病院外科副部長の大越香江氏らは、日本外科学会をはじめ外科系14学会が参画して構築されたNational ClinicalDatabase(NCD)のデータを利用し、男性医師と女性医師との間で短期的な手術成績を比較した。

脳梗塞になったことがある人は詐欺の被害に遭いやすい?米ラッシュ大の研究より
高齢者を狙う投資詐欺やオレオレ詐欺の被害が絶えない。認知症や軽度認知障害の患者が被害に遭いがちだと思われているが、実は脳梗塞の既往がある人も詐欺被害に遭いやすいらしい。

「余命」と「いつまで会話や食事や運動ができるか」、知りたいのはどちら?
がん治療の進歩で長期生存が可能になったことを背景に、16年のがん患者本人への病名告知率は94%(国立がん研究センター調べ)に達している。患者と家族にとって「予後」、すなわち今後の見通しは残された時間を有意義に過ごすために必要な情報でもある。そこで注目されているのが「機能予後」だ。

がんの予防やネガティブ感情軽減に「アブラナ科の野菜」が効果か
ブロッコリーなどアブラナ科の野菜は抗がん、抗炎症作用を持つ「辛み成分」のイソチオシアネートを含み、慢性疾患の予防に働くと期待されている。8万人以上の日本人を対象にした国立がん研究センターのJPHC研究では、男女ともにアブラナ科野菜の摂取量が多いほど、全死亡リスクが減少。
