
熊野英生
第183回
世界連鎖株安や米国利上げでいよいよ9月以降が要警戒の時期になる。株価下落が起こった直後、政府などからは、必ず「ファンダメンタルズは良好なのだから慌てる必要はない」と説明される。株価下落の背後にあるメカニズムを読み解いて、先々のファンダメンタルズがどう変化するかを、熟慮しなくてはいけない。

第180回
最近、日本の財政再建が順調に進んでいるという理屈付けとして、「中長期の経済財政に関する試算」が挙げられる、そこでは、2020年度の赤字幅(基礎的財政収支赤字)が縮小していると報道されている。それは本当なのか、しっかり吟味する必要がある。

第177回
財政難に陥ったギリシャがユーロを離脱するのか注目視されている。日本はギリシャ以上に、政府債務/名目GDPの比率が高く、財政再建に苦しんでいる。今だからこそ、ギリシャの危機的状況をつぶさに観察して、失敗事例を他山の石とすることが望まれる。

第175回
5月決定会合における日銀の景気判断の上方修正、6月10日の為替に対する黒田総裁の発言などを勘案すると、今後日銀が「量的」な追加緩和を行う可能性は低いと見られる。その代わりに日銀が向かうのは、「質的」な追加緩和だと筆者は見ている。

第174回
2015年の日本の金融市場にとって最大のリスクは、中国株リスクかもしれない。上海総合指数は5000ポイントを超えて、対前年比2.5倍の水準だ。今後、投機マネーの暴走、バブル崩壊、中国経済減速ともなれば、日本経済が被るリスクは計り知れない。

第171回
毎年6月に「日本再興戦略」が更新され、安倍政権の成長戦略が描き直される。ただ、当初抱いていた期待感の大きさと比べると、かなり色褪せてしまった感は否めない。改革を加速する突破口である「国家戦略特区」の運用状況について振り返りたい。

第168回
巷には、人口減少によって地域経済が疲弊するという通念がある。しかし筆者は、これに異論を挟みたい。自然増減と社会増減という、人口減少の2つの要因を合わせて考えて見ると、違った角度から人口減少の実態と地域創生のヒントが見えてくる。

第165回
2月の米雇用統計は、予想を超える力強さだった。このペースで雇用拡大が続けば、金融当局は6月のFOMCの際にも利上げに着手するだろう。株式市場にとって「鬼門」と言われる利上げの影響はどれほどか。過去の利上げと比較しながら考察しよう。

第162回
欧州のマイナス金利のしわ寄せを受けたこともあり、国債利回りがマイナス金利となる異常な状態が続く日本。2月初にマイナス金利は一旦解消しているが、今後再びマイナスに沈み込む可能性もある。極端な金利低下に潜む潜在リスクを考えよう。

第9回
平和で優しいイメージの未(羊)年とは打って変わって、日本や世界は課題山積。著名な識者に、新年を予想する上でキーとなる5つのポイントを挙げてもらった。今回は、熊野英生・第一生命経済研首席エコノミストの見通しをお伝えしよう。

第160回
日銀が量的・質的金融緩和を始めて、間もなく2年が経つなか、原油価格の下落には歯止めがかからない。日銀の物価見通しについては、前提となる原油価格や為替の水準は公表されていない。2014、15年度のコアCPI見通しの下方修正は必至と見られるが、日銀はどう動くのか。

第159回
2015年の景気は出だしがよい。日本経済の好発進を示す、非常に強い経済データがいくつも発表されている。問題は、その出足がさらに先行きの持続的拡大にスイッチできるかどうかである。新年1回目は、筆者なりに好材料と不安材料を考察してみよう。

第158回
原油価格は12月、WTIで50ドル台の水準まで低下した。今後、日本経済にとってその影響はどう出るのか。実は1980年代にも、今のような「逆オイルショック」の状況があった。当時の状況を踏まえ、2015年に訪れる「トリプルメリット」の予想しよう。

第157回
総選挙が14日に迫っている。このタイミングを捉えて、安倍政権がアベノミクスを通じて成し遂げたことと、道半ばのことを峻別しておく価値はあろう。アベノミクスの「トリクルダウン」はなぜ利きにくいのか。その背景を徹底検証しよう。

第156回
今回の衆議院選挙が日本経済の行方を左右する重要なイベントであることは、重々承知だ。だが、今ひとつ盛り上がりに欠けると感じる。消費税増税を先送りして、一体何を目指すのかがぼんやりしているからだ。私たちは何を各政党に求めるべきか。

第155回
7~9月期のGDPは市場の予想を大きく下回った。日本は、景気後退局面とも見られかねない状況にある。ただし、足元は2012年のような世界中真っ暗の景気後退局面とは異なる。筆者は2015年度に向け、景気回復への「トリプルメリット」が訪れると見る。

第154回
10月末、日銀は追加緩和に打って出た。これは多くの市場参加者にとってサプライズだった。黒田総裁の説明は、それまでの日銀の説明と著しく一貫性を欠いていたからだ。それは、10月上旬に行なわれた金融政策決定会合の議事要旨を見ると明らかだ。

第153回
10月31日、日銀が意表を突いて追加緩和に打って出た。金融政策の主要な武器が、為替への影響力に移っていることは明らかだ。日銀はこれからも、物価上昇率2%を目指して、円安圧力を働かせる追加緩和を発動し続けるのだろうか。

第152回
足もとの為替相場は、一時は110円台と6年ぶりの円安水準になった。筆者が為替について長らく持っていたストーリーラインは、「達磨さんが転んだ」というものだ。ゲームのルールを決める「鬼」としての主導権は、いつも米国サイドにあった。

第151回
最近、黒田日銀総裁の発言などを観察すると、「CPI前年比2%」という物価安定目標の達成時期の目処としてきた「2年」という時間軸が、柔軟化していることを感じる。日銀は追加緩和よりも、フォワードガイダンスの再設計に動くのか。
