
高田 創
第74回
社会保障と税の一体改革関連法案が成立し、消費税率の引き上げが決まったが、肝心要の年金制度の見直し案はどこに行ったのか。国民の間には、「自分たちが掛けた公的年金が、将来、返ってこなくなる」という不信感が蔓延している。

第73回
7月以降、米国の経済指標の下方バイアスにも歯止めがかかり、市場の動きは悲観から楽観モードへ塗り替わった印象がある。だが、その持続性は本物だろうか。回復が期待を下回れば、金利低下のサイクルを繰り返す可能性もある。

第72回
米国での大干ばつや黒海沿岸の穀物産地での高温・乾燥などから、大豆、トウモロコシ、小麦の先物価格が急上昇している。消費者物価への影響が懸念されるなか、それを読み解くキーワードは国際市況と政府売渡価格の「時差」である。

第71回
野田首相は、「分厚い中間層を復活させる」という表現を用いることが多い。しかし、中間層を復活させることは非常に困難だ。中間層が薄くなる現象は、さらに進む可能性がある。それを承知した上で、中間層を増やす計画を考えてみた。

第70回
日本の政治の特徴は、長らく「決められない政治」とされてきたが、消費税増税に取り組み、IMF資金基盤強化への貢献に言及した野田首相のリーダーシップが、海外で高く評価されている。CDSプレミアムは、米国に次ぐ信用度の高さである。

第69回
回復を続ける日本の景気は、2013年前半に減速へ転じそうだ。そうなれば、消費税率の引き上げは遅れるかもしれない。政局が起こりつつあるなか、浮上した補正予算の編成案では、現代版「日本列島改造論」の機運が高まる可能性もある。

第68回
2011年度の税収も、当初予算の見積もりから大きく上ブレた。例年、税収の上ブレ分は歳出拡大に使われがちだが、これを肩代わりにすれば復興増税をかなり圧縮できるはずだ。消費税があれだけ議論されながらも、この事実は問われない。

第67回
ギリシャの再選挙で緊縮財政派が過半数を占め、組閣も行なわれたことで、安堵感が漂っている。ただし、これで欧州債務問題が収まったものではなく、本質は何も変わらない。怖いのは経常収支不均衡だけでなく、預金不均衡の拡大だ。

第66回
追加金融緩和に向けた市場の期待を強める要素が連なっているが、追加緩和が実体経済を刺激する経路はますます細くなっている。日本の金融政策は、自然利子率と実質政策金利の逆転という本質的な問題に直面している。

第65回
企業は、どんどん若い勤労世代に賃金分配をしなくなっている。若者の人数が減っているので、配分する報酬額が減っていても仕方がないと考える人は多いだろう。本当にそうなのか。筆者はその点にこそ、大きな誤解と問題が隠されていると思う。

第64回
G8首脳会議では、欧州債務危機への対応について、財政の健全化と経済成長の両立を追及する方針で一致した。こうした動きからもわかるとおり、ポピュリズムと政治上の党利党略が生じる「ギリシャ化」現象が蔓延し始めている。

第63回
2012年1~3月期以降、全ての四半期で日本の実質GDP成長率はG3(日・米・欧)でトップとなる可能性がある。財政抑制の欧米と財政出動の日本の間には“ずれ” があるからだ。しかし、2013年前半には「財政の崖」が訪れそうだ。

第62回
5月の連休前後に、再び円高が進行している。なぜ、円高の流れはこれほど粘り強いのか。相場変動には、しばしば説明できない「アノマリー」というパターンが確認されるが、現在の円高パターンは錯覚だろうか、それとも本物だろうか。

第61回
今年1-3月期は世界的に景気回復期待が生じ、株高だった。振り返れば、2009年3月にもバーナンキFRB議長の発言から、米国で「green shoot」(春の芽生え)とする株価上昇局面が生じたことがあった。今年の春はどんな局面なのか。

第59回
日銀の金融政策の中で、「究極の禁じ手」とされる日銀の国債引受けについて考えてみたい。消費税増税をせずに、日銀が国債発行分を全て引き受けて、税収不足を補えばよいのではないかと言われたら、その可否をどう考えるべきか。

第58回
2011年の日本から米国への債券投資は、さながら米国へ日本株購入資金を供給するようなものだった。2012年、「日本化先進国」である草食系の日本は、「日本化脱却」においても世界の先駆けとなることができるだろうか。

第57回
震災から1年が経った。この間、被災地を中心に多くの難局に直面した。経済の観点に立つと、震災前に戻った指標、戻っていない指標がはっきりしつつある。動向を見ると、2012年は日本のGDP成長率がG7でトップとなる可能性もある。

第56回
不況下では若者たちが保守化すると言われるが、現実はそうではない。確認できるデータでは、起業希望者の3割以上は35歳以下の若者たちなのだ。起業による雇用出効果は思いのほか大きく、労働需給を大きく改善することにつながる。

第55回
日銀はバレンタインデーに、長期国債購入を行ない、物価上昇の目処を設定する姿勢を打ち出した。これらは為替市場を円安傾向へ導くきっかけの1つになった。この決断は日銀から市場への「愛のメッセージ」ともとれるが、実際、その効果は大きいだろうか。

第54回
内閣府は1月24日『経済財政の中期的試算』を発表したが、同試算は消費税率を10%に引き上げたとしても、その目標の実現可能性が低いことを示すものといえる。そもそも財政赤字の問題は単にその多寡にあるのではない。財政赤字を自国でファイナンスする力にも目を向ける必要がある。
