
田中泰輔
覇権戦略と選挙戦術で米中を読む 来年ドル円100円以下の可能性
令和改元早々、米政権の対中関税引き上げ強行を受け、株安・円高が進んだ。米中摩擦で相場が振らされる展開は昨年から繰り返されている。投資に予言のようなものはなく、常にリスクに備えて動くべきことを踏まえて、米中摩擦に臨みたい。

米景気終盤に狙う高金利投資 新興国通貨はまだ選別が必要
米景気がピークを過ぎると、株安・ドル安になるのが典型的なパターンだ。日本の投資家は円高で、内外株式も外貨資産もほぼ全滅となりやすい。このため景気の終盤では早めに、益出しの売りをするよう勧めてきた。その上で、株安・円高を経て再購入の時機が来るまで一休みするか、債券など高利回り資産を物色するかが選択肢となる。

米逆イールド見極めに猶予あり、ドル円中期下方リスクに備えを
米国で長期金利が短期金利より低くなる逆イールド現象が発生した。長短金利格差(=イールドカーブ、以下YC)は、景気サイクルに沿って特有の傾きを見せる。過去には逆YC発生の約1年半後に米景気は後退に陥った。

1ドル=110円超では買い削減 戻り相場の伸びしろは限られる
ドル円は、104円台への急落を経て、110円超を回復した。今後数カ月、短期投資家には買い場もあろうが、中長期投資家にはドルの買い持ちを減らす場面とした2月16日号本欄の見方は変わらない。

数カ月内にドル円再浮揚の目 基本は売り場、買いは短期のみ
米国は景気拡大の終盤にあり、株価が調整色を見せ、ドル円も今後2年は下降サイクルとの見立てから、昨年後半以降、株やドルの買いポジションの削減を推奨した。ただ、今後数ヵ月は、相場がいったん持ち直しやすいとみる。

19~20年はドル円下降基調に再浮揚は買い場でなく売り場
年末年始にドル円も株価も急落した。米景気が陰ると、日本は株安と円高の同時進行でことさらに苦しむ。円での株式や外貨資産へのリスク投資は、好況時の株高・円安(外貨高)で全て良く、不況時の株安・円高でほぼ全滅する。それだけに、市場の変節の兆候を忠実に読み取り、投資の引き際の判断が重要になる。

米金利3%に絡む3シナリオ ドル高収束で20年90円台へ
ドル円相場は、今年早くに急落し、後半に持ち直した。ただし、米国で景気堅調を背景に金利が上昇しても、1ドル=110~115円を上値めどと想定してきた。上昇サイクルは終盤戦に入りつつある。今後1~2年では90円台を視野に入れている。

ドル高収束の兆しを見逃すな 一時退避し来る円高で再参入
景気もドル相場も上り坂の終盤。「まだ上がる」と相場の上澄みを狙う短期ドル買いは今でも可能だ。しかし、堅実な投資家には相場格言「まだ」は「もう」なりと言いたい。

ドル相場は上り坂の終盤に 19年は米景気の変節が転機か
ドル相場の上り坂は終盤とみる。トランプ財政で来年まで伸長されつつあるが、道は次第に細り、切り立ち、足を踏み外しそうなリスクもチラホラ。短期投資ならまだ押し目買いに妙味を見いだせるが、中長期投資なら既保有分の売り場も考え始めたい。

ドルは来年にかけて天井圏に 110円以上は投機の短命相場
かく乱的とされがちな為替変動には、実は基本ロジックに沿う美しさがある。ただし、国と国の格差、短・中・長期で異なる主な動因の重層を読む分析は少々面倒だ。専門家の視点もさまざまで雑多な情報が溢れ、為替はかく乱的との心証が広まってきた。本欄では、数カ月~2年の中期を観測期間の中心に置き、情報を分別し、相場の主な動因への視座を定めるよう心掛けている。

ドル高終盤でトレンド追えず 不惑の視座は米経済とドル
金利上昇と株価がけん制し合う米景気終盤は、ドル相場も単純に上値を追えない。専門家の解説も小刻みな相場を追認して変転しやすくなる。

ドル円は当面底堅いが終盤戦 110円超の深追い買い注意
米経済成長は今年も来年も2%台後半と堅調で、利上げは今年さらに2回、来年も2~3回行われ、政策金利は3%に至る公算だ。FOMC(米連邦公開市場委員会)委員が考える中立金利水準もほぼ3%が中央値。

米長短金利が3%超に上昇でもドル円は110円台前半が天井
相場には攻め時がある。ドル円では、2012年暮れ~13年の安倍相場初期が四半世紀に1度級の攻め時だった。このときドル円は75~80円で、15年には125円台へ上伸した。一方、足元のように腰を据えて臨みにくい局面も巡ってくる。ドル、ユーロ、新興国・資源国通貨全般に悩ましい事情があり、円相場も翻弄されやすい。

米金利のドル円支持は続く 今年は100~110円が基本
2国間金利差が為替レート決定に関わることは経済理論からも説明できる。ドル円は、日本の金利が長年0%近傍のため、米金利だけで説明できる展開が多かった。ドル円は主に米好況下の金利上昇時に上向きやすいと認識される。

目先1ドル100円、来年90円台PPPは中短期の尺度にあらず
円高はどこまでいくか。昨今日本の企業や投資家から切実にこの直接的な質問が多い。その中でPPP(購買力平価)を引き合いに「100円あたりが落ち着きどころか」という問いがまた多い。実は、PPPは中短期相場を論じるにはなじまない。

流れ変えた1ドル=107円割れ1、2ヵ月は100~105円
円安継続の鍵は1ドル=107円台確保と1ヵ月前に本欄で書いた。2月中旬に107円を割り込んだ時点で、ドル円の今年の予想を見直した。今後1、2ヵ月は105~100円に陥る可能性が高い。

適温相場があちこち軋む18年 1ドル107円確保が円安の鍵
年明けから適温相場が軋んでいる。昨年中は、米欧景気が堅調な一方、低インフレのまま、低金利(債券高)と株高が続いた。米国以外の景況改善でその通貨が上昇する分ドル安となり、ドル建て取引の商品相場が底堅くなった。

18年は「ユーロ>ドル>円」 1ドル120円で1ユーロ150円超も
ここ数年、ドル円相場の方向性を読む最良の指針は米国経済の堅調さと案内している。2012~15年には米景気好調に日本銀行の異次元緩和が便乗する形で、ドル円は75~80円の水準から125円まで上昇した。

来年1ドル120円への流れ続く 小反落局面での買いが有効
今局面のドル円相場を読む鍵は、米景気の堅調さにある。2016年に米景気が減速したとき、日本銀行がマイナス金利導入という円安策を取ったが、ドル円は120円から100円割れへ急落した。このとき、円高の原因を日本の経常黒字拡大とする向きもあったが、その後黒字が拡大しても、トランプ政策で米景気が底堅さを保つとの期待で110円台に戻った。

来年のドル円相場は115~120円の上値を繰り返し突っ掛ける展開を予想する。今年はこれまで110円前後のレンジを上抜けできず、上方へと動き始める場面を辛抱強く待つことが多かった。この忍耐が報われる条件がそろったのはここ1、2カ月だ。米国・世界の景況改善を背景にリスクオン環境下の円安機運が次第に強まった。
