これまでの常識は忘れよう グローバル時代で勝つ人材の流儀#2Photo:Aiko Suzuki,Mlenny/gettyimages

ディープテックと呼ばれる基本技術の開発に投資し、事業創造を目指すUTEC(東京大学エッジキャピタルパートナーズ)。特集『グローバル時代に勝つ人材の流儀』(全6回)の#2では、共同創業者である郷治友孝氏に世界で戦える起業家やビジネスパーソンが少ない日本の現状とこうした現状を打破するような人物像をどのように考えているかについて話を聞いた。(聞き手/校條 浩)

90年代後半の新法制定、新興市場創設で
生み出された今につながる“問題”

校條 日本の経済成長を支えてきた製造業を中心とした大企業の商品やサービス、ビジネスモデルが、消費者や社会の変化とテクノロジーの進化によって陳腐化してしまったことは、誰もが認識していることだと思います。この30年間、こうした陳腐化してしまった産業界を変革しなければならないことは分かっているはずですが、なかなか変わらない。それはなぜなのか、どうしたら日本の産業は変わるのか。シリコンバレーから30年間、日本を見てきましたが、この問いは答えがないまま、今に至っています。

 郷治さんは経済産業省で官僚として活躍されてから、2004年にUTECの創業に伴って退官。なかなか珍しいご経歴のベンチャーキャピタリストだと思います。

 UTECは基本技術の開発に投資し、事業創造を目指すディープテックのベンチャーキャピタル(VC)として、近年その存在感を高めていますね。日本で新事業創造に関わる郷治さんにとって、この“変わらない日本”をどう見ていますか。

「日本でこぢんまり」を打破する起業家像とは?東大発ディープテックVCトップの答え郷治友孝・UTEC(東京大学エッジキャピタルパートナーズ)社長

郷治 私はもともと、通商産業省(経済産業省の前身)で役人として働く中で、1998年の投資事業有限責任組合法(制定時の名称は中小企業等投資事業有限責任組合契約に関する法律)を起草する経験をしました。VCなどのファンドの仕組みを定めた法律です。

 ちょうどその頃は国もベンチャービジネスを振興していこうということで、こうしたリスクマネー供給の仕組みづくりと合わせて、99年に新興企業が株式上場しやすくするための東証マザーズが創立されたりしました。これによりITやバイオなどのベンチャーがすごく起業しやすくなったと思います。

 しかし、ここで今に続く問題が生まれたことも見過ごせないです。