
鹿野達史
日本経済は、23年に入っても生産活動が弱含んでいる一方で、サービス消費が増加するなど第3次産業の持ち直しが続いている。ただ、自動車生産の持ち直しが明確になってくる可能性があるなど、日本景気が底堅さを増すとみることもできつつある。今後の製造業やサービス業の展開を読み解き、景気循環を用いて日本景気の先行きを大胆に見通す。

新型コロナウイルスの感染拡大で大幅に落ち込んだ日本経済は、生産活動や輸出で弱め動きが続いている。世界経済の減速や設備投資の減少を背景に日本景気の先行き懸念は強まっているものの、資本係数などのマクロ指標から企業の設備不足感が強まっていることや世界景気の持ち直しを指摘し、株価が夏場以降に高値を目指す展開が期待される理由を解説する。

米国、欧州などでの利上げ、金融引き締めが続く中で、世界経済は減速しており、日本景気は、製造業を中心に弱含みの動きを示している。日本景気の先行きを俯瞰するために、資本財輸出や国内の機械・建設投資を対象とする周期解析の結果を紹介するとともに、周期解析の結果を組み合わせた複合循環論から、日本景気や日本株の先行きを大胆に見通す。

日本経済は、経済活動の押し下げ要因が断続的に現れる中、景気後退局面入りはなんとか回避され、20年5月をボトムとした景気回復が途切れずに続いているとみられる。ただ日本株は底堅いものの上値は限られており、先行き懸念の強さがうかがわれる。交易条件というマクロ指標の変化を説明しし、23年前半の日本株に期待できる理由を解説する。

新型コロナウイルスの感染状況などが懸念され、7~9月期はマイナス成長となったが、日本景気は設備投資を中心に緩やかな回復基調にある。今後も企業の設備投資計画などを考慮すれば、投資主導での景気回復が続くと期待される。設備投資を中心とした各種投資が拡大を続ける理由を中長期の景気循環を使って解説するとともに、景気回復の流れを阻害するリスクの所在を明らかにする。

米国での金融引き締めが続く中、米国の株価は弱めの動きを続けている一方で、日本の株価は、相対的には底堅く推移している。今後は旅割や水際対策の緩和で旅行需要の拡大が期待されるが、これまで日本景気をけん引してきた半導体需要に陰りがみられる。フーリエ解析をもとにした周期解析から、半導体需要の長期波動を抽出し、今後も半導体需要の拡大が期待され、日本経済、日本株ともに底堅い展開が予想される理由を解説する。

日本の株価は、米国株に比べ相対的に底堅さをみせている。円安による企業収益の押し上げ効果に加え、米国や欧州などに比べ遅れていた経済活動の再開・正常化への期待もある。個人消費の動きを所得や資産だけでなく、人出の変動やインバウンドの動きも加えて推計し、コロナ後の個人消費の押し上げ規模を大胆に試算する。

日本の経済活動は、夏場以降も持ち直しが続くとみられていたが、いわゆる感染の第7波と物価上昇で、再び弱含むとの懸念が高まっている。日本景気を長らくウォッチしてきたエコノミストが、恐れるべきは物価上昇ではなく、物価に先行して動くマネーストックの落ち込みであることをノーベル経済学賞が提唱する理論をもとに明快に解説する。

円が対ドルで急速に下落している。6月下旬には、一時1ドル=137円台を記録し、1998年9月以来、23年10カ月ぶりの円安・ドル高水準をつけ、その後も135円前後で推移している。もっと、ドルは対ユーロやポンドなどでも上昇基調にあり、ドルの実効レートも大幅に上昇しており、ドル高の様相を呈している。

22年1-3月期の実質成長率は前期比年率マイナス0.5%と、思いのほか小さかったことが確認されている。サービス消費の落ち込みが、過去2回の緊急事態宣言に比べ小さかったことが目立っている。しかし一方で、自動車関連の落ち込みは大きい。国内外の経済活動から4-6月期以降の日本景気の行方を探り、景気回復のカギを握るのが「設備投資」である理由を解説する。

新型コロナウイルスの感染状況の変化や、政府の感染拡大防止のための制限措置の適用・解除に合わせ、景気の変動が続いている。1-3月期の実質成長率(前期比)は、個人消費が落ち込んだことからマイナス成長になったとみられるが、4-6月期は、重点措置の解除で個人消費の回復などから高めの成長が見込まれている。日本景気が改善に向かう様子を消費・設備投資・輸出から確認し、今後も前向きな動きが期待できる理由を語る。

円は、対ドルで一時1ドル=125円台まで下落するなど円安が進んでいる。このため最近では、円安の日本経済に対するマイナスの影響が指摘されている。円安が進むと、円建てでみた輸入品の価格が上昇し、海外への支払いが増え、企業収益が圧迫される。しかし一方で、円建てで見た海外での収益は拡大する。円安による輸入物価上昇の影響を交易条件という考え方から整理することで、景気に悪影響を及ぼすのは原油価格の上昇であることを指摘するとともに、原油高ピークアウト後の日本景気の先行きを展望する。

政府による重点措置の適用や対象の拡大で人出は減り、外食、旅行、娯楽などのサービス消費は落ち込んでいる。しかし、重点措置適用の対象はすでに縮小しており、4-6月期への期待も高まりつつある。そんななかで日本が直面しているのはウクライナ危機だ。ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけとした世界経済の落ち込み、原油高・株安・円高の「ウクライナ・ドミノ」が日本経済に与えるインパクトを定量的に提示する。

米インフレ率が5%台まで上昇する中、米連邦準備制度理事会(FRB)は、金融緩和の縮小から金融引き締めに向け動き、米長期金利は上昇基調だ。これまで米インフレ率、長期金利は、低下基調を続けてきたが、足元では反転しているとみられる。米国の物価、金利、民間投資を18世紀後半から振り返り、上昇・下降の周期を見出すことで、コンドラチェフサイクル(長期波動)の観点から米国経済の先行きを大胆に予想する。

昨年12月に新型コロナウイルスの新たな変異株であるオミクロン型の感染拡大が確認された後、日本では新型コロナの新規感染者数が急増している。政府は、16都県を対象にまん延防止等重点措置(以下、重点措置)の適用を開始し、関西3府県にも適用される見込みである。重点措置の対象となる都府県の域内総生産は、日本全国の66%強を占める。この結果、21年末にかけて増加していた人出は、今後、落ち込むだろう。重点措置の適用による人出の落ち込みに伴う個人消費の減少額の推計結果を紹介し、重点措置適用の日本景気へのインパクトを考察するとともに、南アフリカや英国の事例などから、オミクロン型の感染が日本で拡大しても、日本の成長率が大きく落ち込まない可能性があることを解説する。

内閣府は11月30日、20年5月を景気の「谷」と認定したことを発表した。景気の山・谷は、景気拡張(回復)と後退の分岐点となる。日本経済を長年分析するエコノミストが、景気の分岐点を判断する際に専門家が用いる指標群を解説するとともに、足元の指標群から21年の日本景気の現状や22年の景気のカギを握る要因を指摘する。

8月下旬以降、新規感染者数が減少基調となる中、消費への下押し圧力が和らいでいる。一方で、部品の供給制約で自動車は大幅減産を余儀なくされており、7-9月期はマイナス成長の可能性が高まっている。それでも秋以降に日本景気が高成長に転ずる理由をサービス消費の増加や筆者が推計する自動車生産計画から明快に解説する。

緊急事態宣言・まん延防止等重点措置が9月末で解除となり、飲食店などの営業時間は延長され、イベントなどの参加人数の制限も緩和されている。こうした制限措置の緩和により、経済活動の持ち直しへの期待も高まっている。宣言解除後の人出・人流の増加による成長率を押し上げ効果を試算し、しばらくは日本景気の高成長が続くことを示唆する一方で、2022年初め以降の景気弱含みリスクを指摘する。

緊急事態宣言・まん延防止等重点措置の9月末までの延長が決定され、経済活動の下押しが引き続き懸念される状況といえるが、4-6月期の実質個人消費は、前期比0.9%の増加となった。政府は、飲食店の営業時間の短縮や大型商業施設の休業などを要請し、個人にも外出の抑制を働きかけており、消費の落ち込みが続くとの見方も多かったが、実際は増加していた。個人消費が増加を続ける理由を人出・神流の観点から考察するとともに、政府が発表した行動制限措置緩和の個人消費押し上げ効果を大胆に試算する。

緊急事態宣言、まん延防止等重点措置の対象拡大などを受け、人出は7月23日をピークに減少に転じている。こうした状況の下、日本株は上値の重い推移となっているが、昨年3月の安値に比べ70%ほど高いなど下値は堅い。中長期的に、日本経済が堅調に推移する素地が整ってきていることが要因として考えられる。景気循環分析を得意とするエコノミストが、民間設備投資の中長期循環から日本株の先行きを大胆に占う。
