
鹿野達史
消費税率引き上げの影響が、引き続き注視されている。乗用車販売台数、家電販売額、百貨店、スーパーマーケット、コンビニストアの売り上げなど各種販売統計をみると、家電は駆け込みと反動が14年4月の税率引き上げ時と同程度となっている。一方、スーパーやコンビニでは、今回の方が相対的に規模が小さくなっている。個人消費に失速する懸念は見られないだろうか。

弱い外需と堅調な内需という組み合わせではあるが、日本経済全体でみると景気失速は回避されている。しかし製造業部門の悪化が進めば、景気が底割れに至る可能性が指摘されてきた。また、内需の抑制要因となる消費税率引き上げの悪影響も懸念されている。各種消費関連統計から個人消費の動きを確認し、日本景気の先行きを考える。

日経平均株価が昨年10月以来の高値を付けるなど、株価は堅調な推移が続いている。しかし国内の景気指標は、力強さを欠くものが多く、加えて19年10月の消費税率引き上げの影響も見極めがついていない。一方で、世界経済の先行きに対する懸念が弱まり、企業収益の回復への期待が高まっている。半導体部門の復調の持続性を中心に、世界・国内景気と株価の先行きを考えてみよう。

製造業と非製造業の経済活動や景況感がかい離する状態が続く。輸出や生産、製造業が不調だが、内需や非製造業の活動が堅調で、経済全体の成長が保たれている。過去をみると、輸出や生産活動、製造業部門の落ち込みが景気悪化を招く典型的なパターンだった。今はどういう状況なのか。

今回の消費増税では、駆け込み需要を2014年4月の引き上げ時の3分の1程度と想定し、他方で教育無償化などの押し上げ効果を織り込んでも、駆け込みの反動や増税効果により、2019年度下期の実質GDP成長率(前期比)を下押しするインパクトがある。景気の下振れ回避に万全を期すために求められる経済対策とは。

米中摩擦などの影響もあり、世界経済が減速し、日本の輸出は弱めの動きが続いている。ただ一方で、内需の拡大から日本経済は年率2%前後の実質成長を続けており、GDP統計でみると、日本経済は堅調に推移している。

米中貿易摩擦などを背景に世界経済の先行き不透明感を懸念する声は強い。現に、日本銀行が開発・公表する輸出環境を包括的にモニタリングする指標「SCOPE」の構成指標の一部は、低下が続いている。ただ、各国・地域が景気対策を発動する態勢に入るなか、世界経済の持ち直しの動きもみえている。各国・地域の金融政策が「ハト派」化し、景気対策が発動される様相を強める中、半導体部門の調整の一巡もあり、世界経済は持ち直しの兆しがより確かになっているとみられる。

内閣府は5月、景気動向指数・CI一致指数の基調判断を景気後退の可能性が高いことを示す「悪化」としたが、早ければ7月にも「下げ止まり」へと上方修正する可能性が浮上している。秋にかけて生産活動の全般的な持ち直しから、日本景気に上向きの動きが確認されるだろう。その背景として、どんな理由が考えられるのか。

内閣府の景気動向指数・CI一致指数の基調判断が「悪化」となるなど、景気の弱さを示す経済指標が増えている。一方、先日発表された2019年1~3月期のGDP統計・1次速報は「強め」の結果となった。足もとの日本経済の実力をどのように判断すればいいのか。
