
酒井真弓
2023年4月、千葉銀行は新たなDX戦略「ちばぎんDX3.0」をスタートした。「面白い銀行」「千葉銀行“で”いいよね」を目指し、アプリの利用者増で振込の取引量が飛躍的に増えたり、独自の人材育成を行ったりと目に見える成果を上げている。同行は2021年からDXに取り組んでいるが、最初の2年は「顧客体験の創造って結局何なんだ?」「千葉銀行のファンになるってどういうこと?」という問いに答えが出ず、暗中模索だったという。頭取や仲間とともに「これで誰が幸せになるの?」とひたすら問い続けた2年間を経て、ブレイクスルーは「銀行に対してニーズなんてあるか? ないわ」と気付いたことだった。

AIによってさまざまな業務の効率化・自動化が進む中、かつてはアナログな業務が占めていた営業現場でも、AIで効率化を図り、顧客への提案や関係構築に注力する動きが見られるようになった。AIで営業の仕事はどう変わっていくのか。そして、AIが浸透した世界に残る営業の価値とは――独自のAIで営業力強化を図る、人材サービス大手・ディップに聞いた。

創業64年!フジッコはDX経営改革「ニュー・フジッコ」で昭和の呪縛を解けるのか
2020年に創業60周年を迎えたフジッコは、大規模な経営改革「ニュー・フジッコ」をスタートした。不採算事業を整理し、惣菜、昆布、豆製品といったスター商品に絞って拡販。紙とハンコの撤廃、決裁のデジタル化、総額283億円に及ぶ設備投資などを実施した。2022年には、掲げた14の取り組みのうち12が完了か、完了見込みと順調に推移し、3.9億円分のコストカットを達成。現在は、残る牙城「DXの推進」と「工場運営の改革」を進行中だ。だが、真のラスボスは、他にいた。

1887年(明治20年)創業の老舗菓子メーカー、春華堂。静岡県浜松市に本社を置く同社の代名詞となっているのが、1961年(昭和36年)の発売以来ロングセラーの「うなぎパイ」だ。「夜のお菓子」というユニークなキャッチコピーとともに抜群の知名度を誇り、2023年はうなぎパイだけで売上75億円(前年比1.4億円増)を達成した。だが、ここまでの道のりは決して平坦ではなかった。看板商品が強すぎて次のブランドが育たず、長年うなぎパイ以外は赤字を繰り返していたのだ。

「闇バイト」が広がりを見せている。簡単に高収入を得られるとうたい、振り込め詐欺や薬物の運搬といった犯罪行為に加担させるこの手の求人は、SNSを中心に蔓延。Z世代の約40%が「闇バイトに勧誘された経験あり」と回答するなど、深刻な状況が続いている。そんな中、「バイトル」などの求人サイトを運営するディップは、「闇バイトチェックAI」の運用を開始した。どういった求人サイトに闇バイトの情報が多いのか。また、大手求人サイトがこうした取り組みを行うことにデメリットはないのだろうか?

少し遅い桜の開花とともに入社式が終わった。新入社員の早期戦力化と離職が悩みの種となるシーズンの到来だ。辞めてほしくない人材に見限られる会社には、共通点があるという。日本、米国、エストニア、ASEAN諸国などでサイバーセキュリティ人材の育成に取り組み、組織の問題にも詳しい、Armoris 取締役専務 CTO 鎌田敬介さんに聞いた。

「100年に一度の大変革期」といえば自動車業界だが、「1000年に一度の大変革期」といえば、1300年以上の歴史を誇る仏壇業界だ。景気後退に住環境の変化、仏壇に求められる役割の変容など、抗い難い要因が積み重なって、2022年には自宅に仏壇がない人が6割近くに上った。「売り上げが10分の1になっても廃業はしたくない」という声もあるほど業界全体が苦しい状況にあるが、伝統にとらわれない発想で再興を目指す、老舗仏壇店の5代目がいる。仏壇の未来やいかに?

白鳳14年から1300年以上の歴史を持つ仏壇。大切な人と心を通わせ、前を向いて生きていくために、人々は仏壇と向き合ってきた。みどりや仏壇店(福岡県福岡市)は、仏壇・仏具の販売で150年以上続く老舗だ。5代目の吉川和毅さんは、「お客さまの目的は、仏壇を買うことではなく、故人を偲び、供養をすること」と語る。そんな仏壇の世界で繰り広げられるDXとビジネスモデルの変革、その挑戦を取材した。

すかいらーくフルタイム勤務の2児の母が、未経験から「難関IT資格」取得まで頑張れたワケ
学習意欲のある日本のビジネスパーソンは、47%に上る。一方、グローバルの調査において、日本は「学習・自己啓発について特に何も行っていない」が52.6%。対象となった18の国と地域で最も自己研鑽(けんさん)ができていないという結果となった。学びたいのに時間がない、モチベーションが続かない。そこから一歩踏み出すには?

カインズ、ワークマン、ハンズなど30社を束ねるベイシアグループの中でもスーパーの「ベイシア」は、AIを活用したデータ分析によって需要を予測し、欠品によるチャンスロスや廃棄の削減に力を入れる。AIを駆使しているけれど、一番大事なのは「人」らしい。

カインズ、ワークマン、ハンズなど30社を束ねるベイシアグループ。2020年にはグループ売上高1兆円を突破。22年7月には、日本IBM出身の樋口正也さんをトップに、グループ横断のDXカンパニー「ベイシアグループソリューションズ」を設立し、生成AIの活用、AIを駆使した需要予測、SNSやECサイトの口コミを生かした商品開発など、熟練者やヒットメーカーに頼らない持続可能な成長を目指している。そこに国内トップランナーとしての余裕はない。樋口さんが抱く危機感の正体とは。

「100年もハミガキを研究していると…」ライオンが社内情報を知り尽くした生成AIを開発したワケ
ライオンは、12月8日、生成AIと検索サービスを組み合わせた「知識伝承のAI化」ツールを開発中だと明かした。100年以上に渡って蓄積されてきた膨大な社内データの中から必要な情報を短時間で取得し、生成AIが分析・評価した結果を簡潔に表示する。すでに研究開発領域での検証を終え、2024年6月までの実装を検討中だという。生成AIで研究開発はどう変わるのか。プロジェクトをリードするデジタル戦略部と研究員に、それぞれの思いを聞いてみた。

自分が2人居ればいいのに――忙しくて手が回らないとき、誰もが一度は「自分の分身が欲しい」と思ったことがあるのでは。その願望、もしかしたら叶うかもしれない。TwinLLM、つまり、大規模言語モデルによって自分の分身となるAIを開発しているスタートアップが日本にある。彼らが生みだそうとしているのは、映画「アイアンマン」に登場する“JARVIS”や“ドラえもん”のような存在のAIだ。

大日本印刷(DNP)は、多業種との共創で生成AIの可能性を探る「DNP生成AIラボ・東京」を12月4日に開設すると発表した。先立って10月に組織された「生成AIラボ」は、1年の時限付きプロジェクトで1000件のユースケース創出を目指す。今年5月にはグループ社員3万人に生成AIの利用環境を提供し、社内コミュニティーや勉強会を通じて浸透を図ってきた同社。自社に閉じず共創を進める背景には、アメリカで生成AI関連30社と議論する中で痛感した、圧倒的なレベルの差があった。

北九州の人気チェーン「資さんうどん」のDXを支え、伴走している九州のホームセンター「グッデイ」。DX成功企業として注目される同社だが、15年前まではメールもホームページもないアナログな会社だった。2015年にクラウドへ舵を切り、約10年で売り上げ26%増を果たしたグッデイがどのようにDXを進めてきたのかを紹介する前編に続き、後編では、LINEミニアプリの活用など、POSのクラウド化によって広がった販促・マーケティングの可能性、そして、ChatGPT(GPT-4)をどのように活用しているかに迫る。

前回の記事で、北九州の人気チェーン「資さんうどん」が好調の裏で急速にDXを推し進めていたことを紹介した。実はその資さんうどんのDXを支え、伴走していたのが、同じく九州のホームセンター「グッデイ」である。しかしグッデイは、15年前まではメールもホームページもない、極めてアナログな会社だった。それが2015年にクラウドへ舵を切り、約10年で売り上げ26%増を果たした同社は、ついに、90年代から作り込んできた店舗の基幹システムをクラウドに完全移行、Webアプリケーション化を成し遂げた。さらにはPOSもクラウド化し、分断されていたデジタルマーケティングと基幹システムの連携を強化する。小売のラスボスとも言える複雑怪奇なシステムを掌握した今、「IT企業のようなシステム開発を目指す」と語る3代目社長の柳瀬隆志さん、その心は?

北九州のソウルフード「資さんうどん」、関西進出を控えた今明かすDX“驚きの成果”
1976年創業、北九州のソウルフードとも言われるうどんチェーン「資(すけ)さんうどん」が好調だ。2023年8月には、岡山に初出店。11月には関西進出を控えている。3代目社長の佐藤崇史さんは、創業家一族でも従業員でもなく、元々資さんうどんのファンだったという人物で、業務改革推進本部長の伊藤英記さんとともにDXを推し進めている。ECサイト開設、LINE公式アカウント開設、ファンミーティング開催、「資にゃん」導入……“顧客視点のDX”とはいったい何なのか。

9月1日、経済産業省が推進する「DX認定事業者」に認定された、飲料大手のダイドーグループホールディングス。前編では、代表取締役社長の高松富也さんにインタビュー。強い危機感を抱きグループ約100拠点を行脚するなど、社長自ら動いた組織改革の10年を聞いた。後編は、同社のDX部門「ビジネスイノベーショングループ」に抜擢された竹重美咲さんをはじめ、全社総力戦で挑むDXの現場に迫る。

9月1日、飲料大手のダイドーグループホールディングスが、経済産業省が推進する「DX認定事業者」に認定された。同社が変革に舵を切ったきっかけは、2014年に3代目の高松富也さん※が代表取締役社長に就任したことだ。当時のダイドーは、主力の自販機ビジネス市場がじわじわ縮小し、売上が頭打ちの状態にもかかわらず、良かった頃の空気をまだ引きずっていた。危機感が伝わらないことに焦った高松さんは、1年でグループ約100拠点を行脚し、社内からDXリーダーを2人抜擢する。拠点行脚から始まった高松さんの地道な社内改革とは。

「DX担当者を出せ!」の怒号から一転、福島県磐梯町の高齢者にスマホ決済が浸透したワケ
2021年にDXを本格化し、今や国内有数の自治体DX成功モデルとして知られている福島県磐梯町。その磐梯町が、交流のある自治体を訪れ、テレワークを実施する「旅する公務員」実証事業を行っている。夏休み気分で磐梯町へと取材に向かった筆者を待ち受けていたのは、行政の掟と常識に縛られた「自治体DXの闇」だった。この闇に光は差すのか。
