この秋冬の携帯電話業界の話題は、スマートフォン一色です。スマートフォンの先駆けといえば、アップルの「iPhone」。2008年11月に発売されて以降、爆発的に普及しました。
このiPhoneの牙城を崩さんとばかりに、NTTドコモ、au、ソフトバンクの3キャリアは、それぞれ新機種を続々と投入、本格的なスマートフォン時代の到来を予感させます。
これまで日本の携帯電話市場は、通信会社が独自の機能・サービスを開発し、端末も日本のメーカーが日本市場に合わせた独自の機種を開発してきました。そのため、生物が独自の進化を遂げた南米エクアドルのガラパゴス島になぞらえ、“ガラパゴス化”した市場でのみ通用する“ケータイ”、略して“ガラケー”と揶揄されてきました。しかし、そのガラケーの時代は終わろうとしています。
この秋から冬にかけて出揃う各社のスマートフォンは、多くが米Googleが開発した無償の携帯端末用OS(オペレーティング・システム)「Android」を搭載したものです。いわば、世界標準の携帯端末であり、すでに世界中で使われている機種が、ガラパゴス島と化していた日本にも入ってくるわけです。
これによって何が起こるか──。特集タイトルは「スマートフォン革命」と、多少大げさな表現に見えるかもしれませんが、要するにスマートフォンによって、それを使う人々、モノやサービスを提供する人々に、どんな変化が起こるのかをテーマにしたものです。
ユーザー向けには、25機種に及ぶ注目の端末を紹介し、それぞれの特徴をお伝えします。とりわけアップルのiPhoneとサムスン電子の「Galaxy S」については、機能のみならず、分解してメイン基盤をじっくり眺めることから両社の戦略の違いまで分析しました。
また、スマートフォンと従来のケータイの違いは、機能をカスタマイズできるところにあります。自分の好きなアプリを取り込んで、自分で端末を進化させ、生活やビジネスの質を“革命的”に向上させることができるわけです。
そこで、ビジネスマンにとって有用と思われるアプリを、iPhoneとAndroidで合わせて100種類、厳選して紹介します。さらに、これまでのケータイでは体験できなかった機能、たとえば拡張現実(AR)、クラウド系のデータストレージサービス、語学学習のサービスなどは、特にページを割いて解説しました。
作り手側に起こる“革命”は、通信キャリア、端末メーカー、コンテンツ事業者に分けて、詳しく解説しました。大きな変化は、サービス構築や端末の製造を全て自前で行なう「垂直統合型」の体制から、それぞれをバラバラに行う「水平分業型」にシフトするという点です。
世界標準の技術を採用することで、市場が一気に世界規模に広がるという変化もあります。それは同時に、競争の構図も世界規模になるということです。関連業界の各社は、スマートフォンを起爆剤にしてどんな将来戦略を描こうとしているのか。ビジネス誌ならではの視点と分析で迫ります。
折しもボーナス商戦で、ケータイの買い換えを検討されている方も多いはず。そんな方にとって参考になる特集であること、間違いなしです。
(『週刊ダイヤモンド』副編集長 深澤 献)