ここまでリーダーの「考え方」を主に紹介してきました。今回から「目標達成」について紹介していきたいと思います。ここでの問いは、「そもそも、目標とは何なのか?」です。新刊『トヨタの伝説のディーラーが教える絶対に目標達成するリーダーの仕事』から、その問いに答えていくとします。
目標とは何か
そもそも目標とは何でしょうか。
どんな会社でも、会社として何を実現したいかというビジョンがまずあります。
そのビジョンに向かって、それぞれの組織や個人が具体的にどう活動していけばいいのかを、期間を区切って示したものが目標です。
たとえば私が携わっていた営業職であれば、目標は数字で示されます。売上額や契約数、利益などの数値目標が、週・月・半期・年といった単位で設定されます。
生産や企画、管理などの職種でも、数字というかたちではないかもしれませんが、何らかの目標が設定されていることでしょう。
私は38年間、自動車販売の現場にいましたから、目標は数字そのものでした。「何台売れたか」を追う毎日でした。
私がよく上司に言われたことは、「目標を好きになれ」「数字を愛せ」ということです。
会社から与えられる目標に対して、つらいとか厳しいとか、ネガティブな思いを抱いていては、仕事への意欲が生まれません。目標そのものを好きになるほど入れ込むことで、日々の仕事に対する意欲が生まれ、目標達成に近づく。上司はそう言いたかったようです。
理屈はわかるのですが、私は目標を好きになることはできませんでした。「目標がなければどんなに楽か」と思ったこともたびたびあります。
店長時代に、48ヵ月連続で販売目標達成の記録をつくったときも、やはり目標が嫌で嫌で仕方ありませんでした。
目標を達成することで、翌月の目標は前月より少し高くなります。連続達成を続けることで、ハードルはどんどん高くなっていきました。さらに、それまでの会社記録を上回る連続達成記録を樹立し、雑誌にも取り上げられて、社内外の注目を集めるようになりました。
私はあまりのプレッシャーに胃が痛くなり、胃薬を飲みっぱなしでした。通勤途中にめまいがして呼吸が苦しくなり、「このまま続けていたら死ぬ」と思ったこともあります。
新たな目標が大きなプライドを生む
それでも諦めることなく目標を追い続けたのは、目標が自分にとってプライドであり、生活の一部であり、生き甲斐だったからです。
目標があり、それをクリアすれば、喜びや満足感、達成感を得られます。自分自身で成長したことを実感し、自分の存在を認めることができ、プライドが生まれます。
そしてその次には、また新たな高い目標が設定されます。新たな高い目標を達成すれば、今度は以前よりも大きな喜びとプライドを感じることができます。
連続達成はその繰り返しです。
いくら目標が高くなっても、「自分たちなら絶対に達成できる」というプライドがあるからこそ、ひるむことなく立ち向かっていけます。また、リーダーのそんなプライドを感じ取ることで、部下たちはついてきてくれて、チームに団結力が生まれます。
私は本部の部長になって販売第一線から退いたとき、数値目標からやっと離れることができました。
すると、とてもホッとしたと同時に、少し寂しいような気分になりました。毎日仕事をしていても、自分が自分じゃないような、そんな錯覚さえ覚えました。
あんなに嫌いだった目標ですが、自分にとっては、日々の生き甲斐を与えてくれる重要な存在だったのだと気づかされたのです。
どんなビジネスパーソンにも目標は欠かせないものです。目標のない日々には張り合いがありません。
それがどんなに達成困難なものであったとしても、目標があることは生き甲斐になります。まずは目標に正面から向かい合い、達成するためにはどうすればいいのか、考えることから始めてみてはいかがでしょうか。