「リアリティ・ショック」が早期離職の主な原因!?
前述の疑問を考えるために、今度は入社1ヵ月未満で辞めたいと思った(しかし、実際には辞めなかった)人に、その理由を尋ねてみました。新人アルバイトはどんなことに不満を感じるのでしょうか?下の図を見てください。
■新人の離職を招きやすい不満要因
「面接時の説明と仕事の量が違う」(1位)、「面接時の説明と仕事の内容が違う」(2位)、「入社前のイメージよりも仕事の量が多かった」(4位)、「入社前のイメージよりも、仕事に厳しい雰囲気の職場だった」(5位)…これらの項目を見て、何かお気づきのことはありますか?
そう、ギャップです。「忙しいこと」「厳しいこと」そのものが原因で辞めているというよりむしろ、実際に働きはじめる前に抱いていたイメージとのギャップが引き起こすリアリティ・ショックが、早期離職の要因になっているらしいのです。
「面接のやり方がまずいと内定辞退につながる」という点はすでに確認したとおりですが、どうやら面接の影響範囲はそれだけではありません。面接がうまくいっていないと、リアリティ・ショックによる早期離職をも引き起こしかねないのです。
面接の成否を決める
「現実的職務予告」とは?
ここから見て取れるように、人材の採用と育成には、お互いに切り離せない部分があり、採用ステップの時点でやはりある種の育成がはじまっているのだとも言えます。リクルーティング研究(採用研究)の世界でも、そのあたりにまで踏み込んだ研究がなされています。
採用にまつわる科学に関しては、これまでリクルーティング・メディア研究とリクルーター研究の2つを紹介してきましたが、最後に重要なのが現実的職務予告と呼ばれる行為に関する研究です。
一見難しそうな言葉ですが、元の言葉はリアリスティック・ジョブ・プレビュー(Realistic Job Preview)、つまり「仕事の内容をできる限り実像に近いかたちで“下見”させること」です。専門家のあいだでは頭文字を取ってRJPなどとも呼ばれています。
求職者は自分なりに情報収集をしたうえで、新しい職場に対して何らかのイメージを持っています。それはしばしば、過剰な期待や楽観的予測に基づいた“幻想”を含んでいます。入社後のリアリティ・ショックは、この幻想と現実との格差によって生まれます。
そこで、採用活動を真の成功に導くためには、リクルーター(面接者)がRJPによってその“幻想”をほどよく実像に近づけ、採用後の“衝撃”を少しでも和らげる必要があります。つまり、リクルーターには、つねに適切なRJPが求められるというわけですす。
人材面でも業績面でも安定した実績を上げている店長のOさんは、面接のときに必ず「ここで働くことについて、いまどんな想像をしていますか?」と質問するようにしているそうです。求職者が過剰な期待感を持っていないか、必要以上に心配していないかをたしかめて、面接の段階で認識のズレをなくすよう心がけているとのことでした。これも効果的なRJPのためのテクニックだと言えるでしょう。