「新人が長続きする職場」をつくる3つの施策

では、新人の受け入れにプラスに作用する施策として、どんなものが考えられるでしょうか?「1ヵ月未満で辞めてしまった人」と「それ以上続いた人」のそれぞれの職場特性と比較調査したところ、いくつかのポイントで顕著な差が認められました。下の図をご覧ください。

■スタッフの早期離職を左右する職場の特徴

これをベースに考えると、少なくとも次の3つの施策が有効だと言えそうです。

(1)教育担当者をきちんとつける
新人は「みんなで教える」ではなく、明確に教育担当者がいるほうが、長続きするという傾向が出ています。ただでさえ人手不足ですから、教育を担当できるほど優秀なスタッフは多くはいないかもしれませんし、そういう人材のキャパシティを後輩教育に奪われるのが心配だという人もいるでしょう。しかし、アルバイトが早期離職を繰り返している職場ほど、専任の教育担当者をつけたほうが新人の定着率は上昇します。

店長自らが教育を担当することも考えられますが、これはあまりオススメしません。話を聞いたある店長さんは「若い頃は、一から十まで自分で教えてしまっていた時期がありました。でもそれではうまくいきませんでしたね」と語っていました。店長自らが教育係をやってしまうと、どうしてもスタッフたちは「新人は店長が教えるもの」と思ってしまい、かえってほったらかし状況を助長してしまいます。むしろ、「店長には任せておけない。自分たちがしっかり教えてあげないと!」と思わせるくらいの空気づくりを大切にしているという話はとても印象的でした。

また、「ベテランに教育係はさせない。あえて中堅バイトに任せるようにしている」と語る店長さんもいらっしゃいました。まず単純にベテランスタッフは忙しいので、なかなか新人につきっきりで指導するのが難しく、「ほったらかし」が起きやすいと言います。また、ベテランスタッフはどうしても求める仕事のレベルが高くなりがちで、新人に過度なプレッシャーがかかることがあったそうです。

(2)全体ミーティングの機会を設ける
全体ミーティングの場も、新人の早期離職を抑制する効果が期待できます。シフト制の職場でスタッフ全員がそろう時間をつくるのは難しいかもしれませんが、職場全体の目標やスタッフ全員の情報を共有する全体ミーティングも試してみる価値があります。

(3)談話スペースを設ける
業務外のコミュニケーションの活発さも、早期離職の低減に影響します。また、長期にわたって働いている人が多い職場ほど、「職場内に談話できるようなスペースがあったか?」という質問項目に「はい」と答えています。とくに外食業などでは、狭いバックスペースに荷物がギュウギュウに詰め込まれている職場がよく見受けられます。客席確保のために優先順位が下がるのは理解できますが、十分なスペースを取ることでスタッフの就業期間が伸びる可能性も、データからは読み取ることができます。職場内に談話スペースを設置し、休憩やシフト交代時などにフランクな会話ができる環境を整えてみてはいかがでしょうか。

まとめ
□新人放置厳禁!教育担当者をつけるのがベスト
□新人の段階では「人による(ピープル軸の)育成」がより重要
□新人が店長・スタッフとコミュニケーションを取りやすい環境をつくる