今の「就活」には問題がある、おかしなことになっている。多くの人がそう感じています。

 厚生労働省と文部科学省調査による、今年3月卒業予定の大学4年生の内定率は68.8%(昨年12月時点)と、1996年の調査開始以降、最も悪い数字でした。ですが、実態はもっとひどい。中堅以下の大学からは、「実際には3割ほど」という声がよく聞かれました。

 1月に入ってからも、4年生向けの合同企業説明会はもちろん、「志望理由の書き方」など就活の基礎作法を教えるセミナーまでが開催されています。今もリクルートスーツを着て動き回る4年生もいれば、心が折れてもう動こうとしない学生もいる。留年の道に逃げ込む学生も少なくありません。今の就活は、こうした「漂流生」をたくさん生んでしまっています。

 こうした就活問題の根っこには、売り手となる大学生の増加があるでしょう。今の就活生は、「2人に1人が大学に入る時代」に入学しました。大卒求人は景気の変動によって上下しますが、大卒数は一貫して増加傾向にあります。

 有名大企業に入りたがるのは今も昔も変わりませんが、憧れの企業の内定ゲットを狙う母集団が増えたのですから、当然、競争は厳しくなります。

 大学教育の質の低下も著しいものがある。ある東京都内の中小企業社長が嘆いていました。応募者が少ないからではありません。応募はそれなりにありますが、「基礎学力が低すぎて、こわくて採れない」というのです。

 ただし、就活の構造問題はそれだけではありません。さまざまな歪みやお粗末が絡み合って、問題の解消を難しくしています。

「Part1 漂流する就活生」では、就活をめぐる狂想曲と大学のキャリアセンター(就職部)の機能不全の実情を追いかけました。就活生の親へのアドバイスも入っています。ここに掲載した宮台信司・首都大学東京教授へのインタビューは、ダイヤモンド・オンラインで完全版を載せる予定です。

「Part2 採用活動の実像」では、買い手市場にもかかわらず繰り広げられる採用バトルの裏側、採用する側の企業の本音に迫りました。「就活生が聞きたくても聞けないこと」を、就職人気トップ100社へぶつけ、回答一覧を掲載しています。

「Part3 揉める就活制度」では、採用活動についての取り決めと実態との乖離、その時期をめぐってまとまりがつかなくなっている現況に切り込みました。大竹文雄・大阪大学教授と太田聰一・慶應義塾大学教授による対談は、経済学の立場から就活問題を読み解いています。

 この特集で明らかにした就活の虚実、採用活動の実態や企業の本音というのは、そのまま就活生への実践アドバイスになっています。ヤマ場突入を前にした就活生、就職について考えたい学生にもぜひ、読んでもらいたいと思っています。

(『週刊ダイヤモンド』副編集長 小栗正嗣)