実存主義の哲学者は、概ねニート的な生活を送っていた

原田まりる(はらだ・まりる)作家・コラムニスト・哲学ナビゲーター 1985年 京都府生まれ。哲学の道の側で育ち高校生時、哲学書に出会い感銘を受ける。京都女子大学中退。著書に、「私の体を鞭打つ言葉」(サンマーク出版)がある

佐々木 そもそも、ニーチェをスマホゲームの開発者にするなど、哲学者を現代に合わせたキャラクターに設定しているのがすごいですよね。ギャップに惹かれるというか…。

原田『伝え方が9割』で勧めている、ギャップ法みたいな感じですね。

佐々木 (笑)。なぜニーチェを主役キャラクターにしたのですか?

原田 ニーチェは名言が「詩的」なんですよ。私は「哲学は科学と文芸の中間である」と思っています。小説家がいなければその作品の世界観がこの世に生まれなかったように、特定の哲学者がいなければ、その概念はこの世に生まれなかったでしょうし。中でもニーチェはかなり文芸寄り。なので、名言らしい名言が多くて、センター性があるというか。読み手がわかりやすいと感じる言葉を残しているなと思いますね。だから、『超訳 ニーチェの言葉』も広く読まれたんだと思います。

佐々木 なるほど。…そういえば哲学者って、どうやって哲学者になったんですかね。当時そういう仕事があったんですか?

原田 いえ、ニーチェをはじめ実存主義の哲学者は、基本的にニートみたいな生活を送っていたようです。大学教授をしていた人もいましたが、だいたいは家にこもったり、散歩したりして本を書いていたりとか。でも、その本の内容が素晴らしいんです。実存主義哲学者の思想は合理的な素晴らしい妄想、とも受け取ることができます。

佐々木 原田さんの本に出てくる哲学者たちはみんなオシャレですが、これは当時の格好に近いんですか?キルケゴールなんて「黒ずくめのファッションに身を包む、カリスマ読者モデル」ですものね。

原田 当時の格好を尊重したわけではないのですが、ニーチェはオシャレに気を使っていたようなので、「自分なりにこだわりがある」ような設定にしています。キルケゴールは成金のおぼっちゃんで「自分にとっての真実が大事だ」ということをよく言っているので、ちょっと独特なファッションにしています。