インドには上下水道インフラが未整備の都市が多く残る Photo:REUTERS/AFLO

 プラント大手の日揮は、小規模な都市インフラの輸出事業に取り組む。半径約1キロメートル圏内に住む約3000人という単位で、主に上下水道やゴミ処理施設などを設置し、運営のノウハウまで提供する。

 日揮はこれまで、石油や天然ガスなど特定の分野のプラントメーカーとして受注してきたが、今回はすべての都市インフラを扱うため、都市構想を練る段階からかかわるという点が新しい。また、都市インフラ事業といえば数万人規模のものが多いが、これほど小規模なケースは世界でも珍しい。小規模であればすべてのインフラを一体管理してエネルギー効率を上げやすくなるほか、当初は小さく始めても急速な都市発展とそれに伴う需要変動に対応できる。

 先々には導入した各圏を統合し、いわばコンビニエンスストアのドミナント出店(特定の地域に集中出店し運営を効率化する出店方法)に似た発想を持つ。まずはインド西部で事業化の実験を始める。

 じつはこの取り組みには、世界中で繰り広げられているインフラ受注合戦で日本勢が負けてきた反省が生きている。今、新興国ではエネルギー関連の社会インフラ整備の需要がわき上がっている。その需要を取り込もうと、海外勢は国のトップである大統領や首相が乗り込んで商談をまとめるなど、国を挙げて取り組んでいる。

 日本勢は最先端の技術を前面に出しているがゆえに高くつく。新興国は最低限のインフラで十分で、低コストでインフラ敷設から運営管理まで売り込む韓国やロシアに競り負けていた。今回は都市設計からかかわるため、ニーズを正確につかめる。さらに横浜市とも連携。都市発展とともに総合的にインフラ運営をする自治体のノウハウが「他国にはない日本独自の強みとなる」(丸山修平・日揮事業推進プロジェクト本部顧問)という。

 実験で事業モデルが確立できれば、後れを取る日本のインフラ輸出戦略の強力な武器になる可能性がある。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 須賀彩子)

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