どんなにすばやく立派な仕事をしても、「やり直し」になってしまっては、元も子もありません。トヨタの仕事術では、その最大の原因は、「仕事の最終的なアウトプットが明確でないから」と考えます。トヨタ自動車でホワイトカラーの業務の質の向上を推進するメンバーが、トヨタグループ内外の仕事の進め方の参考としていただければと編集した 書籍『トヨタ公式 ダンドリの教科書』から、「最終的なアウトプットのイメージを明確にする」のノウハウを紹介するその第1回です。
仕事の最終的なアウトプットのイメージを
明確にしないと、やり直しが頻発する
目標を達成するための手段が「最終的なアウトプット」です。仕事を進める前に上司や関係者と「最終的なアウトプット」を共有・合意することで、やり直しをより少なくできます。
仕事を委ねられ、やってみたら、上司から「こんな仕事をお願いしたわけではない」と言われてしまった。一生懸命にやったのに、けんもほろろに突き返されてしまった。こういうことが、職場ではよく起こります。
これは、「仕事の最終的なアウトプットのイメージ」が共有されていないことが原因の一つです。上司も伝えていなかったし、部下も聞いていなかった。
その結果として、やり直しというロスが発生してしまうのです。これは、大きく生産性を下げてしまいますし、上司も部下もモチベーションが大きく下がります。
仕事の最終的なアウトプットが共有できていると勝手に思い込んでしまうことが、往々にしてあります。ところが実際には、依頼者と仕事を引き受ける人で異なるアウトプットイメージを持ってしまっていたりする。
上司にすれば、「そのくらい当然わかるだろう」と思っています。しかし、そうではないのです。だから、きちんとアウトプットのイメージを部下に伝えなければいけないのです。そして、正しく共有できていることを確認しないといけない。実際には、5分、10分、手間をかければ、できる話なのです。
昔ながらの「一を聞いて十を知る優秀な部下」を、上司は期待しているのかもしれません。自分自身もそうやってきた、と思っている上司も少なくありません。
もっといえば、他の人が過去に失敗したことと同じ失敗をさせて学びを得るということが、部下にとっての教育になると思い違いをしている上司もたくさんいます。
しかし、こんなことをしているから、生産性が高まらないのだ、ということに気づく必要があります。最初からアウトプットイメージが正しく共有されていれば、防げる話なのです。
これができていないために、部下はせっかくやったのに怒られ、うまくいかなかった理不尽さにやる気をなくしてしまったりするのです。
最終的なアウトプットは、できるだけ具体的にすることで、やり直しは少なくなっていきます。口頭で伝えるだけではなく、文字や図表、写真なども加えたほうが、イメージが伝わりやすいことは多々あります。
もし、最終的なアウトプットが正しくイメージできる実物のようなものがあるのであれば、それを見せるのが一番早いでしょう。
「仕事の最終的なアウトプット」を明確するには、6つのノウハウあります。
(1)前回がどのような最終的なアウトプットだったかを把握する
(2)仕事の依頼者に最終的なアウトプットイメージを聞く
(3)仕事の最終的なアウトプットイメージを思い浮かべる
(4)アウトプットイメージを書き出し、関係者に相談する
(5)場合によっては複数の案を考える
(6)他の同じような仕事をベンチマーキングする
次回から、それぞれの内容を紹介していきます。