編集者のアイデアを超えた
高田さんのサービス精神

――装丁のアイデアはどこから生まれた?

中鉢 まず帯でカバーの一部が隠れるのをうまく利用したいと思いました。帯をつけると一見まっとうに見えるけど、帯を取ると「こんなことになっている」というギャップの面白さを出したかったんです。

 帯をつけていると、お洒落な場所で原稿を執筆している文豪のような高田さん。フォトジェニックな方なので凄くはまると思いました。それで帯を取ると下半身はブリーフ姿。つまり文豪のような顔をしてバーにいる高田さんの下半身は、ブリーフという。

 場所は個人的によく知っている学芸大学のバーで。そこにデザイナーさんとロケ班にいって、僕がモデルとなってイメージを伝えるための写真を撮りました。後日、それを高田さんに見せたところ「ブリーフか、ちょっと弱いね。他でもよくやっているから。天狗のお面で」と言われました。

 びっくりしました。僕は嫌がられるかと恐る恐る提案したつもりだったのですが、逆に僕の方がサービス精神足りなかった。

『適当日記』(前編)<br />ダイヤモンド社らしくない本は<br />こうして生まれた話題を巻き起こした天狗のお面。もちろん実際に使用された「本物」、です。

――あの天狗は高田さんが持参?

中鉢 いえいえ、天狗までつけてくれるんだって喜んで、僕が新宿、渋谷近辺のお店を探しました。それが全然なくて。インターネットでも探したんですが、いいのがないんです。雑貨屋さんや出店にある天狗のお面は、よくみると安っぽいんです。プラスティックで出来ていたりして、鼻の高さもないんです。あと鼻の角度も重要でした。

 結局、浅草の仲見世通りなんかにあるんじゃないかと思って、休みの日に出かけて見つけて来ました。

――随分立派な天狗ですね。ちなみにいくら?

中鉢 だいたい6000円くらいしました。買ってきて高田さんにお見せしたら、とても喜んでくれました。

 高田さんが凄いなって思うのは、カメラマンがリクエストをすると、ご本人が動いたり表情をつくったりしてくれるんですが、それが様になる。こちらが撮りたい写真のままに、言わないでもしてくれるんですね。ですから上半身はとても真摯な写真に出来ていると思いませんか?

――上半身は確かに。とはいえ、大胆な装丁!

中鉢 そうですね。先輩は「面白いじゃない」って言ってくれたんですが、「あとで社内の誰かに何か言われるよ」とも。だから、製作中はずっと帯つけたままで見つからないようにしていました(笑)。

――でも結果的に増刷になってよかった!

中鉢 おかげさまで! でももっと売れるはずだったんです(笑)。実売3万5千部だったので…。もう少し伸びてほしかったので少し残念でした。でも昨年、電子書籍化したところ、想像を越えるブレークをしてくれて、やっと高田さんやマネージャーさんに顔向けできるな、と。

*こんな社員を採用したからこんな本が生まれたことが、やっとわかりました。次回は、電子書籍になった経緯を聞きます。

 

『適当日記』(前編)<br />ダイヤモンド社らしくない本は<br />こうして生まれた

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発言の「適当さ」「無責任さ」が魅力となり、一般視聴者はもちろん、各界の著名人にもファンの多い高田純次。

本書は、還暦を迎えた2007年1月21日から“無理やり書かされ始めた”彼の日々の生活がすべてわかる日記。

 

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中鉢比呂也
ダイヤモンド社書籍編集局コンテンツ編集グループ
1974年生まれ。3度の同業転職を経て、2007年入社。
「ダイヤモンド社らしくない本を出すのが自分の役目」と思いながら、それが何なのかいまだに分からず自問自答の日々。