岩手県では、5月6日現在でも、26,668戸が全戸停電に苦しむ。ライフラインの復旧の見通しはついてきたとはいえ、復興への道のりは長く険しい。また、原発を含めエネルギーの問題は被災者だけの問題ではない。夏のピーク電力に向けて、未だ有効な解決策は具体化されておらず、我々は新たな生き方を模索せざるをえない。

 前回の記事では、米国からの視点を通じて、寄付の効率と当事者性の問題に触れ、それを乗り越える可能性のある新たな発想として「クラウド型ファンディング」の動向を示してきた。最終回となる今回は、米国NPO法人コペルニクの挑戦を通じてクラウド型ファンディングと、彼らが被災者に届けた「ソーラーランタン」や太陽光発電の可能性を見ていこう。

被災地を照らす太陽光発電の灯り

「皆さまから頂戴したソーラーランタンは大変好評でした。本当に素晴らしい製品ですね。懐中電灯では一点しか明るくなりませんが、これなら一つあるだけで部屋全体が明るくなります」

被災者に届いたソーラーランタン。

 宮城県石巻市や岩手県陸前高田市などライフラインに壊滅的な被害をうけた地域に、「ソーラーランタン」と呼ばれる製品が届けられた。太陽光発電のパネルを備え、一度の充電で約8時間の照光ができるこの製品は、現在途上国で爆発的にシェアを広げており、電力網が壊滅しても、電池がなくても使用可能な新たなインフラとして注目されている製品だ。

「掲示板に吊るして、夜でもお知らせが確認できるようになりました」「夜中の炊き出しも安全にできるようになりました」「丈夫で落としても壊れない」など、感謝の声が続々と寄せられた。

 プロジェクトの手配をしたのは米国NPO法人コペルニク。New York Timesでクラウド型ファンディングの代表例として取り上げられたNPOだ。彼らはただ寄付を集めるだけではなく、「当事者が最も必要とする技術を届けることで、寄付のインパクトを増幅させる」という発想で注目されている。