さて、これまでの記事では震災後の革新的な動きに焦点を当て、キュレーション・メディア、寄付プラットフォーム、クラウド型ファンディング、太陽光発電などの動きを追ってきた。
実はこの連載自体、初回の記事で触れた元エンデバーのエルミラ氏との偶然の対話から始まった。その後書かれた彼女の記事を読んだ僕は、この記事は震災にとまどう日本人に共有する必要があると思い、どこで使うかもわからぬまま翻訳した。さらなる偶然が重なり、今こうして短期連載となった。
彼女の言う日本人の「起業家精神」と「市民性」というキーワードに導かれて、震災後に湧き上がるように起こった動きを追ってきた。sinsai.infoの三浦氏、グルーポン・ジャパンの瀬戸氏、徐氏、Donate-japan.comの村野氏、馬渕氏、そしてコペルニクの中村氏。みなに共通しているのは、「いま自分にできることは何か」を考え、最新の技術を新しい文脈で捉え直し、すぐに行動を起こしたことだ。すなわちこれは、エルミラ氏が指摘したとおり、日本人が「起業家精神」を発揮した好例と言えるだろう。
僕が彼らの活動を客観的に取材、分析できたのは、この2年間をカンボジアの草の根NGOの事業開発と各国での市場調査、そして世界的に活躍する社会起業家への取材に負うものが大きい。現在、書籍としてまとめるべく執筆中であるが、彼ら社会起業家は信じられないような逆境にもめげず、むしろそれを追い風にして今も革新を続けている。今回取材させていただいた方々に僕が見たのは、まさに逆境を乗り越え、革新が生まれた瞬間だった。
大震災以後、日本社会のあり方が問われようとしているが、連載で紹介した挑戦の事例は行き先を模索する我々に勇気を与えるのではないだろうか。