また、高い、高いと言われてきた太陽光発電のコストも、パソコンや携帯、液晶テレビと同じような技術学習効果が順調に機能して下がってきている。

 ドイツでは5年ほどでグリッドパリティ(自然エネルギーの発電コストが既存の電力コストと同等か下回る水準)になる見通しだ。化石燃料のコストに環境税の要素を加えれば、風力発電は同水準まで安くなった。バイオマスはコージェネレーションによって熱でも収益をあげられるので、十分競争力のある価格になっている。

 発電量も大きくなった。

 ドイツが北海の洋上風力発電を拡大する計画をもつほか、他国も負けていない。デンマークでは16万kW、イギリスでは30万kWといった「電力会社級」(数十万kW級)の風力発電所が次々に稼働している。

 アメリカのネバダ州には、90万kWクラスの集中太陽熱発電(CSP)施設が電力会社と売電契約を終え、これから建設される予定だ。このCSPのコストも、すでに1kW当たり10円台まで落ちてきている。

 このように、10年前には想像もできなかった勢いで自然エネルギーが増えている。ドイツの掲げる「2020年に約40%、2050年に最低でも80%」という目標は、夢物語どころか、すでに射程距離圏内に入っていると言えよう。

日本の目標値は実現可能だが
前提は全量買取制度の実現

 それに比べ、日本はどうか。菅首相がドービルサミットで宣言した「2020年代の早い時期に自然エネルギー電力を今の9%から20%へ」という目標値は、いかにも高そうに見えて実は、ドイツが過去10年で達成した水準に過ぎない。

 菅首相の宣言に対して批判的な議論を見かけるが、ドイツが過去にできたことを、なぜ日本でできないと考えるのだろうか。ドイツの実績と日本の導入ポテンシャルや技術の進展を考えると、日本でも十分に可能だ。

 ただし、いまの政策レジームを変えない限り、実現までのハードルはまだまだ高い。まずは、全量買取制度の実現が大前提となる。

 同制度の成立に、日本のエネルギー政策はもとより、日本経済の浮沈がかかっていると言っても過言ではない。ただ、こういう意識を持った政治家があまりにも少ない。エネシフジャパンという超党派の議員勉強会をはじめ、全量買取制度を実現するための法律を成立させようとする政治家はいる。

 問題は国会の状況だ。結局のところ、個別に応援してくれる政治家はいても、政局と党利・党略に埋もれて、個別の法律の重要性はまったく無視されている。