本当に割安な建物とは
建物の設計、建設から、入居後の点検やメンテナンス、修繕やリフォーム、リノベーション、光熱費から解体に至るまで、建物の一生にかかるコストを「ライフサイクルコスト」という。本当に割安な買い物をしたいなら「ライフサイクルコストの低い住宅」を選ぶべきだ。
それでは、ライフサイクルコストの低い住宅とはどのようなものか。大きく3つの観点がある。
1. 建物の形状はシンプルか?
複雑な形状の建物は必然的に角(かど)や隅(すみ)の部分が多くなるため、その分だけ雨漏りの可能性を増やす。また例えば外壁の大規模修繕などを行う場合には足場を組むが、修繕費の内訳は、実はおおよそ半分以上がこの足場代で、複雑な形状の建物は足場代も当然かさむ。
望ましいのは「直方体」などの極力シンプルな建物。「デザイナーズ住宅」などといって売りに出されているものの、メンテナンスしにくかったりお金がかかるのでは無意味。本当にデザイン性が高い住宅とは「シンプルな形状だけどカッコいい」というようなものであることを踏まえておこう。
2. 素材と汎用性はどうか?
もうひとつ大事なのが使われている「素材」。メンテナンス期間が長い素材や仕様であるかどうかということ。またキッチンなどの設備はなるべく汎用性の高いものが望ましい。部品などが破損した場合に「海外から取り寄せるために○カ月かかります」では不便極まりないし、コストも高くつく。
3. 定期的に点検できるか
「点検口の有無」も重要。一戸建てなら床下と天井裏、マンションの場合は配管が通っているPS(パイプスペース)などに点検口はついているか。今どき点検口のない住宅を提供している業者はメンテナンス性について意識があるとはいえず、勉強不足で時代遅れだと断言していい。私ならそういった業者の物件は買わない。中古住宅を購入する場合には点検口がついていないケースも多いため、近隣の工務店になどに依頼して設置してもらおう。費用は数万円で済むがが、年に一回程度の点検で防げる雨漏りや水漏れなどの放置による損害と比べたら安いものである。
さくら事務所では毎月、相当な数の中古住宅のホームインスペクション(住宅診断)を行っているが、本当に「もったいない住宅」ばかり。せめて年に1回、建物を一通り点検しておくだけで、防げたであろう水漏れなどの損害で「売れない・売りにくい」「補修のために無駄にお金がかかる」などのケースがいかに多いことかという実感を持っている。
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