なぜ太ることは体によくないのか?「肥満が寿命に与える影響」の研究結果から、肥満と病気の因果関係が指摘されている。さらに、女性より男性の方が、寿命への影響を強く受けることもわかってきた。20万人以上の臨床経験と、生化学×最新医療データ×統計データから、医学的エビデンスに基づいた本当に正しい食事法をまとめた牧田善二氏の新刊『医者が教える食事術 最強の教科書』から、内容の一部を特別公開する。

肥満は確実に寿命を縮める
――肥満と病気には因果関係がある

 信頼のおける医学誌「ランセット」のオンライン版に、アメリカのハーバード公衆衛生大学院とイギリスのケンブリッジ大学の研究チームによる「肥満が寿命に与える影響」についての研究結果が発表されました。

 1970年から2015年に行われた239件の大規模な疫学調査から、32か国1060万人のデータを解析したところ、肥満はさまざまな病気のもととなり、寿命を縮めることがわかったというのです。しかも、重度の肥満者では、寿命が10年短くなり、2人に1人は70歳前に死亡するおそれがあると指摘されました。

 具体的には、BMI(肥満判定基準)が5%上昇するごとに、心疾患系の死亡リスクが49%、呼吸器疾患の死亡リスクが38%、がんの死亡リスクが19%増加したそうです。

 全体の死亡リスクは、BMI22.5~25の「標準体重」のグループが最も低く、30~35の「肥満1度」で45%、35~40の「肥満2度」で94%、40以上の「肥満3度」では300%近く上昇しています。注目しておきたいのは、BMI25をちょっと超えた段階で、すでに死亡率の上昇が始まることです。

 ちなみに、WHOでは、BMI25以上を「過体重」、30以上を「肥満」と定義していますが、日本人の場合、BMIが25を超えると糖尿病や循環器疾患の発症リスクが高くなることがわかっているため、25以上を肥満と扱います。

 一時期、「体重が平均より少し多いくらいのぽっちゃり型のほうが長生きする」と言われたことがありましたが、この研究結果では、それが見事に否定されています。

 この研究では、女性に比べ男性のほうが肥満による寿命への影響を強く受けることもわかっています。日本男性に肥満が増えていることを考えると、この研究結果は非常に大きな意味を持っています。

 日本経済を支えるビジネスパーソンが「ちょっとくらい太っていてもいいや」などと自分を甘やかしている場合ではないのです。肥満が、糖尿病をはじめとするあらゆる病気に関与していることは、疑いようがありません。