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社内の力だけでは実現不可能な目標を達成するために、買収に目を向けるのは間違ってはいない。ただし、M&Aに魔法などない。
買収によって値上げができる。とはいえ、顧客の大半が満足していない製品を改良するがごとく、1から引き上げていくしかない。同じく、買収によってコストを削減できる。つまり、経営資源や業務プロセスの余剰部分を活用して新規顧客向けのサービスに活用するのである。ただしこれも、自力で新規顧客を見つけるがごとしである。また、新しいビジネスモデルを買収し、改革による成長の基盤として活用できる。それもまた、社内で新しいビジネスモデルを開発した場合と同様である。
要するに、買収するかどうかの判断は、仮に時間と経営資源が十分あるならば、自前で調達するよりも買ったほうが手っ取り早く、かつ経済的であるかどうかという問題にほかならない。
日々、間違った目的のために不適切な企業を買収し、妥当性に欠ける評価指標に従って買収価格を弾き出し、おかしな要素を組み合わせてお粗末なビジネスモデルがつくられている。めちゃくちゃに聞こえるだろうが、実際そうだったし、いまもそうである。しかし、それもなくなるだろう。
次に投資銀行がやってきて、一定の手数料で最高の買収案件を紹介すると言い出した時には、その買収候補が理想の相手なのか、最悪の相手なのか、以前よりずっとに正確に見抜けられることだろう。