自衛隊員がTwitterにつづった被災地の日常

 被災地から寄せられる情報も、より豊かなものになっていました。ここではひとつの印象的な事例を挙げたいと思います。

 普段はイラスト投稿サイトにイラストを投稿していた、あるTwitterアカウントがありました。このアカウントの主は実は自衛隊員。震災直後から、彼はTwitter上に淡々と被災地の状況や救助活動について投稿しはじめました。

 そのアカウントが発信するメッセージは、決して暗いものではなく、いつも抑制した筆致でつづられていました。被災地の大変な状況。そのなかで心が折れそうになりながらも救助活動に邁進する自衛官の姿が目に浮かぶようなものでした。ときにはアニメネタやゲームネタなど、日常の何気ないネタが織り込まれることもあります。

 衝撃的な映像もなければ、被災地の直接的な記述もほとんどない。それでも、このアカウントのつぶやきを読めば、たとえ時間の経過とともにマスコミの震災報道は減っても、被災地の状況は続いていて、そこで黙々と任務を遂行している等身大の人たちの姿が伝わってきます。このつぶやきの主である自衛隊員には、Twitterを通じて様々な激励や寄せられていました。

 またTwitter上にはこのほかにも、たとえば被災地を通る高速道路に鳥取ナンバーの消防車が走っているのを見て日本中が被災地を支援していることを実感した、という投稿も見られました。このつぶやきを見た人がリツイートをしたことでメッセージが拡散され、多くの人が「自分たちも何かできるのではないか」と感じるきっかけになりました。

 今までインターネットを「便利な情報ツール」として見ていた方々の少なくない数が、東日本大震災を機にインターネット、とりわけソーシャルメディアでの心あたたまるコミュニケーションを経験したことで認識を変え、「インターネットは人と人とがつながり合うメディアなのだ」と感じ始めています。