ラテからミルクは作れない
別の例ではコーヒーにミルクを入れてかき混ぜるところを思い出してください。コーヒーの漆黒とミルクの白はやがて混じり合い、しばらくすると鮮やかな茶色になります。しかし茶色のラテが時間がたつと黒いコーヒーと白いミルクに分離しているということはありえません。一度混ざったものは元に戻らないのです。死んだ人が生き返らないのも熱力学の第2法則です。時間の矢はひとつの方向にしか進んでいきません。
それでもこのグローバリゼーションを止めようと思うなら、日本は徹底的に鎖国するしかありません。しかし多くの資源を輸入に頼り、自由貿易で富を築いてきた日本がそのような選択をすれば、国民全体があっという間に貧することになるでしょう。日本はグローバリゼーションの流れにうまく乗って生きていくしかないのです。世界から孤立することは文字通りの自殺行為でしかありません。
現在、世界の国々の経済は急速にグローバル化しているわけですが、これは世界のヒト、モノ、カネがカップの中のコーヒーとミルクのように複雑に混じり合っているプロセスなのです。そして、この経済現象を支配しているのが一物一価の法則です。人々の賃金に関していえば、同一労働同一賃金の原理が全世界的に広がっているのです。
物理学では熱は高いところから低いところに流れ、やがてすべての温度が一定になります。経済学では同じモノがちがう場所でちがう値段で売られていたら、安いところで買って高いところで売るという単純な経済活動によって儲けが出るので、やがて同じモノならひとつの値段に収斂していくのです。
現在のように交通機関が発達し、インターネットで瞬時に情報が地球の裏までいくような時代では、この収斂のスピードが一段と速まっているのです。テクノロジーの発達がグローバリゼーションを加速させています。